リュクサンブール公園から続く散歩道 [フランス・パリ]
色の与える印象は、興味深い。
パリの街並みが落ち着いて見えるのは、
看板の大きさ、その文字の書体以外に、統一感のある色の深さによるのも大きいかも。
街を歩く人々の服もシックな色だしね。
深緑色のお店は、ちょっとオシャレな感じがする。
そこに、また葡萄色が渋く映える。
La Bécasse ラ・ベカス は、鳥の一種。 日本語では、ヤマシギのよう。
この看板は、ビールのKriek クリークの。 簡単に言うと、サクランボのビール。
パリでは、このマーク、La Bécasse ラ・ベカス のもよく見かける。
ここは、La Gueuze というお店。
Gueuze とはベルギービールのランビックの中の一種であるGuezeグーズのフランス語表記。
なんだか美味しそうなビールを飲ませてくれそうな感じ。
でも、この日はパス。 またいつかね。
話は、「ライオンから続く散歩道」の続編。
リュクサンブール公園にあるリュクサンブール宮前の噴水あたりから、東に公園を出ると、
Place Edmond-Rostand エドモン・ロスタン広場。
そこから東に伸びるRue Soufflot スフロ通りに、この店がある。
その通りから見えるのが・・・
・・・こんな建物。 これは、Panthéon パンテオン。
ガイドブックの解説にあった「廟」の言葉どおり、偉人や哲学者の眠る場所のよう。
丘に向かう、ほんの少し上り坂気味の通りを歩いて行く。
途中、脇の小さな通りの間に見える建物も、見逃さず。
煉瓦と石の外壁の模様、窓の形、屋根の傾斜、底から伸びる煙突・・・と、魅惑的。
歩いてきた道、スフロ通りを振り返れば、屋根の向こう遠くに霞んだエッフェル塔の先っぽ。
リズム感に並んだ街灯でさえ、面白い。
これは、パリ第一大学の法学部の建物。
写真左奥から手前に向かって走る道は、Rue Soufflot スフロ通りと垂直に交わる。
これは、Rue Saint Jacques サン・ジャック通り。
これをずっと南下すれば、途中名前を変えて、
Rue du Faubourg-Saint-Jacques フォーブール=サン=ジャック通りとなり、
あのパリ天文台の東横を抜けて、メトロのサン・ジャックの駅に。
パンテオンに向かって歩いて行くと、法学部の建物との間に、
これまた、そそられる形の教会が見えてくる。
見たいものがいろいろあって、視線がキョロキョロ、気持ちがワクワク。
バスや人の歩く姿から、パンテオンの建物の大きさが分かるかな。
1758-1790年に建てられた新古典主義の建物。 高さは83mもあるそうな。
近くまで来ると、丸屋根が見えなくなった・・・。
正面に見える三角形の部分は、建築用語で言うと、pediment ペディメント。
彫刻がいろいろ。 遠すぎてよく見えないけどね。
建物を設計したのは、Jacques-Germain Soufflot ジャック・ジェルマン・スフロ。
このパンテオンの前にあるスフロ通りはこの人の名前に由来。
もともとパンテオンは、教会堂としての建物で、
フランス人の偉人を祀る霊廟としての使用が決定したのは、
フランス革命期の国民議会においてだったと、ウィキペディアにあった。
周りを囲む柵だって素敵な装飾がついている。
あたりにはたくさんの観光客。 パンテオンをバックに写真をとる人たちも。
どうしようか一瞬迷ったけど、また、別の日に来よう。
今、中に入ったら、観るのに夢中になって昼食を食べ損ねてしまいそうだもの。
で、パンテオンの横の歩道を歩く。
Pierre Corneille ピエール・コルネイユ(1606-1684)の像。
誰かしら・・・と調べたら、劇作家さん。 代表作は"Le Cid"(ル・シッド)。
ル・シッド・・・聞いたことあるような、と思ったら、スペイン語でいう El Cid エル・シドだ。
エル・シドは、通称。 本名は、Rodrigo Díaz de Vivar ロドリゴ・ディアス・デ・ビバール。
11世紀後半ごろのスペインのカスティーリャ王国の騎士。
レコンキスタ(国土回復運動)で活躍したんだったかな。
パンテノンと大学の建物の間に見えていたのは、
Église Saint-Étienne-du-Mont サンテティエンヌ・デュ・モン教会。
ゴシック・フランボワイアンとルネサンスの建築様式。
建設が始まったのは、1494年。
それから1624年まで、徐々に建て進められて今の形になった模様。
正面には4本の柱。 右側の柱の間のニッチには女性の像が。
これは、パリの守護聖女である聖ジュヌヴィエーヴ。 この教会にお墓があるそうな。
この教会の名前にもあるSaint-Étienne 聖エティエンヌとは、聖ステファノ。
キリスト教において最初に殉教した人とあった。
フランス語のサンテティエンヌが、スペイン語ではサン・エステバン。
サン・エステバンなら聞きおぼえがある。
言語によって名前が変わるのは本当に複雑。
先日TVで、ローマ教皇ベネディクト16世のお話があったが、
このBenedict ベネディクトという名前、フランス語では、Benoît ブノワになる。
フランスで有名なジャンヌ・ダルクも、スペインでは、フアナ・デ・イリスだったなぁ。
そのスペインで困った固有名詞は、他にもあった。
国連が ONU(オヌ) で、北大西洋条約機構が OTAN(オタン)。
「おぬ」だの「おたん」だの授業の話に出てきても、
何のことやらさっぱりで、「それは何?」と言ったら、
同じクラスのドイツ人が「え?! そんなことも知らないの??」と、目を大きく丸くしてた。
そのビックリした顔に、こっちがビックリして引くほど。
日本語では何て言ってるんだ?って聞くから、
黒板に漢字を書いて、読んでみせたら、さらに仰天してた。
それぞれ、UN や NATO なら、まだ分かったのに。
ちなみに、このふたつ、フランス語でも ONU に OTAN だった。
さて、本題に戻って・・・
正面入り口の上にある半円部分は、建築用語では、tympanum ティンパヌムというらしい。
それを囲むようにある縁取りは、archivolt アーキヴォールト。
ここのティンパヌムは、聖エティエンヌの殉教のシーンで、
フランスの彫刻家の
Gabriel-Jules Thomas ガブリエル=ジュール・トマ(1824-1904)によるもの。
教会の横側にまわってみた。 フライング・バットレス(飛梁)がちらりと見える。
そして、ガーゴイル。 雨樋からの水を吐く、怪しげな動物の形をした像を見るのも好き。
教会の中もさぞかしキレイに違いない。
でも、この日、扉が閉まっていたので、またいつかね。
サンテティエンヌ・デュ・モン教会の前に立つと、ちょっと左側に見えるパンテオン。
斜め後ろからの角度。
写真右側がパンテオンの正面になる。
教会正面から、ちょっと右を見ると、地上階がお店になった建物。
この窓の上の煉瓦の積みや、外壁模様、出窓もいいな。
あ、こっちに道がある・・・と、教会の前からの坂道を、吸い込まれるように下りていく。
この道は、聖ジュヌヴィエーヴの丘の通り。
パンテオンや、サンテティエンヌ・デュ・モン教会のある小高い場所は、
パリの守護聖女の名前がついた
Montagne Sainte-Geneviève 聖ジュヌヴィエーヴの丘というみたい。
下りてきた細い坂道を振り返る。 丘の上に、さっきの教会。
なんとなく、チェコのプラハを思い出した。
あそこも、起伏の激しい街だったなぁ。
坂道を下りた角には、カフェ。
この時は、まだ肌寒くって、テラス席には誰もいなかった。
円テーブルに描かれた女性がレトロな感じ。
V字型に曲がって、また別の坂道を上がる。
途中の小路。 さっきのサンテティエンヌ・デュ・モン教会の横へ通じるよう。
ますますプラハっぽいな。
正確に言うと、“モノクロで撮った”と形容をつけて。
だって、プラハの街は、赤茶色の屋根に、ところどころがラムネ色。
緑、ブルー、ピンク、黄色と淡い色に塗られた壁が可愛い街だったもの。
また、オランダのアムステルダムは、どこまでも平らな街で坂道はなく、
狭い間口の切妻屋根の家並みだったけど、
あちこちにある花屋さんに並ぶ植物や、街を歩く人々の服がカラフルだった。
街の味わい、いろいろ。
・・・と、まだまだ散歩は続くのだった。
でも、そろそろお腹も満たさないとね。
<追加のおまけ>
12区にあるベルシー公園にて。
白いけど、たぶん、桜の一種よね。 ふわふわの花のかたまり、いっぱい。
3月27日(日)には、夏時間も始まって、日本の7時間後ろを歩くパリに。
春になったんだなぁ。
深緑色×葡萄色って、ホント、
おしゃれな感じがしますよね~^^
by nyan (2011-03-30 02:06)
ONU に OTAN ?
NATOがまるで逆じゃないですか。ということは、他にも呼び方が違う物がたくさんあるということですか?考えてみればその通りですね。単語の並び順が違うんですから。むむ…これは…勉強になりました。
by HIROMI (2011-03-30 05:33)
みどころいっぱいですね。
by Jalana (2011-03-30 14:41)
そうそう、こっちの人って、その読み方がまるで違う単語がちゃんと同一のものと分かるんですよね~ルイ14世がドイツではルートヴィヒだし、サルコジさんはドイツ語を聞いているとザコジに聞こえる・・・アルファベットだと、ああ、と思ったりするけど、カタカナにすると元がとても想像つかないこともありますねえ。
by めぎ (2011-03-30 18:13)
早くこちらでも満開の桜を愛でたいです。
春・・・そして気になるのがトラチさん。ぽかぽか日向でお昼ねでしょうか?
by Bonheur (2011-03-30 20:42)
国連機関がたくさんあるので、何言ってるかよく分からなかったりします。
英語も話す人がたくさんなので、どっちで言っていいのか悩んじゃったり。
そのうち、ゴチャゴチャになって、もういいやってなります(笑)
by どらっち (2011-03-31 05:51)
桜咲いてますね♪ 種類はいろいろですが、桜を見ると春を感じますね~。こちらはまだまだ硬いつぼみのまま・・・。今年はおそいです。
by 母ちゃん (2011-03-31 06:10)
この界隈もお散歩した事があります^^
パンテオンには一度お墓参り(?)に行きました。
サンテティエンヌ・デュ・モン教会の内部はちょっと面白い造りになっています。
建築物が好きな人ならきっと興味を持つと思います。
桜、綺麗ですね~
こちらはやっと蕾が膨らんできたところです。
by miffy (2011-03-31 20:49)
パリのカフェのテーブルもおしゃれよね~。
憧れます。
いつかうちのバルコニーにあれをひとつおいてお茶したいです。
ちなみに今の家はバルコニーはありませーん。
by まぐろ (2011-04-01 08:17)
サクランボのビール、飲んだことありますよー。
ベルギービールはフルーティで美味しいですね。
シックな色合いの街並み、好みです♪
by nao (2011-04-01 09:43)
パリのお洒落な色使いは、日本の街並みも真似してほしいところです。
(ガーデニングの道具もそう。深緑色のジョウロがほしくても、日本製のものでその色は売ってないの)
夏時間に切り替わって、ますます季節が進んでいくのを感じますね^^
by MOCOMOCO (2011-04-01 13:19)
ご注進(笑)。
ランビックのグースを普通のビールと思って飲んだら
とんでもないことになります。特にカンティオンは。
2人で1本位を味見の感じでまずは飲んでみて下さい。
飲み慣れてくると良さが少しわかっては来ますが。
リキュールくらいのつもりで。買ってきて、例えばホワイトビールで
割るとか、シャンパンで割るとかすると結構美味しく飲めます。
レフのペナント?が窓から見えますね。こちらはお勧めです。
by aranjues (2011-04-01 17:04)
パリの空気は寒そうだけど、もう夏時間なのね。
ふわふわの白い花、桜かな?桜の仲間よね、きっと^^
横浜でも開花宣言が出て、新入社員がピカピカのスーツでやってきて、春がはじまりました。
by てんとうむし (2011-04-01 23:06)
→皆さま
『リュクサンブール公園から続く散歩道』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 春になって、暖かい日も出てきて、ますます散歩日和。 でも、もう少し花粉がおさまってからがいいかな・・・。
→nyanさま
深緑色×葡萄色は、落ち着いた色でいいですよね。 なんだかちょっと高級っぽい雰囲気もあって。 老舗風(?)。
→HIROMIさま
名詞の後ろに形容詞が来たりするから略語も逆さになっちゃいますね。 他にもっと分からなかったのが世界保健機関。 WHOが、スペインやフランスではOMSなんですよ・・・。
→Jalanaさま
どこの国へ行っても、何かと見どころはあるんですが、パリは大きな街だから特にそうなのかしら。
→めぎさま
名前は特に困りますよねぇ。 チャールズ皇太子も、スペイン語ではカルロスになっちゃうし。 サルコジさんだって、濁らずサルコシ。 すっかり頭の中、混乱です・・・。
→Bonheurさま
次の記事でトラチの姿載せてみましたよ。 相変わらず、のんびり猫ライフ。 こちらは、街路樹も、淡く緑がかってきました♪
→どらっちさま
分からないですよねぇ・・・ほんと、気になる単語、いちいち辞書ひきながらニュース見てます。 WHOが、OMSだなんて、参っちゃいました。
→母ちゃんさま
花が咲いた後に葉っぱが出る、思ってたら、こちらの桜、花と葉っぱが同じくらいに出てきてますね。 なので、桜?桜よね?と不安に。
→miffyさま
パンテオンは、以前たまたまバスに乗った時に通りがかって、あぁ、ここにあるんだ、と窓から見ただけで。 で、今度はそばを歩いただけ。 きっと今度は中に入る機会があるはず(笑)。 中に、見たい絵もあるので、いつかきっと。 サンテティエンヌ・デュ・モン教会の内部は、写真ではちらっと見たことがあるんですよ。 とっても気になります♪
→まぐろさま
我が家はバルコニーがどうしても欲しくって、小さくてもいいから、とついてる物件探しました(笑)。 茶色い指のくせに、たくさんの植木を置きたくて。 そろそろ朝顔も蒔こうかな。
→naoさま
サクランボのビールもあれこれメーカーいろいろですね~。 ベルギービールは、幅が広いので、飲んでて面白いです。 ドロッピェ味のとかインパクトもあり。
→MOCOMOCOさま
ガーデニングの道具、オランダも、パリも可愛いのもオシャレなのも結構あります、確かに。 お店に行くたびに、MOCOMOCOさんと一緒だったらなぁ・・・と思いだしてますよ♪ 最近また可愛い長靴も見つけました。 買ってないけど・・・。
→aranjuesさま
ふふ、我が家は、いつも小さな瓶をふたりで分けっこなので、きっと大丈夫です。 いつか探して見つかったら飲んでみようかしら。 ビールに限らず、飲み物で一番強烈にえ~!!って思ったのは、炭酸の珈琲でした・・・。 スペインに売ってます。
→てんとうむしさま
散歩話は更新が追いつかなくて、まだ2月のお話・・・。 だいたい15℃くらいの日が多いけど、たま~に20℃越えの日がぽつぽつ。 一気に人々はテラス席に陣取って日光浴。 冬でも人が多いパリだけど、まだまだこんなに人がいたんだ・・・って感じ(笑)。
by Inatimy (2011-04-06 06:25)