運河にさざ波 [フランス・ミュージアム]
高く伸ばした手にふれたのは、
凍てつくような冷たい空気。
そして、舞い降りてきた眩しい光。
迷うことなく進んで行こう。
1月中旬の話。 ひとり、ふらりと出かけた。
最高気温で1℃の寒い日だけれど、久々に晴れた青空だったし、歩くのは苦じゃない。
メトロを下りて、西に進路をとる。
通りにはウィンドーショッピングでも十分楽しめそうなお店が並ぶけれど、
私の興味は建築物。
扉の装飾にほれぼれ。
シンプルな青い扉も目を引き付けられる。
うっかりすると見過ごしそうだけれど・・・
・・・ほら、気になるものが。 どうしてこんなところに先の尖った金具が?と思うでしょ。
これは、馬のためのもの。 昔の名残。
扉と金具の間に干し草を差し込んでおくというものらしい。
家の前につながれた馬が食べる様子が目に浮かぶ。
巨大な金色の看板。 文字がなくても何屋さんなのか明白。
さらに歩き続けると・・・
・・・不思議な生き物。 海の怪物らしい。 口から水が出てくる泉だったよう。
これがあるのは・・・
・・・Musée Maillol マイヨール美術館の隣。
"Canaletto à Venise" ヴェネツィアのカナレット展 を観に来た。(~2月10日迄)
残念ながら、中は撮影禁止。
カナレット(1697-1768)は、1797年まで続いたヴェネツィア共和国の画家。
私にとってカナレットと言えば、波。
精密な風景画なのに、適当に描いたような波なのだった。 ※ そのお話は、こちら。
ルーブル美術館で観た1枚がたまたまそうだったのか、それとも他の絵もそうなのか、
ちらっと気になっていた。
で、話は戻るが、これが泉の全体像・・・って、全部入りきってないけど。
中央の像の下の方に、先の海の怪物の顔がいくつかある。 4つだったかな・・・・。
1739~1745年に作られた"Fontaine des Quatre-Saisons" 四季の泉。
彫刻&レリーフは、左から右へ、春、夏、秋、冬を表しているのだそう。
それらの装飾を手掛けたのは、
フランスの彫刻家 Edmé Bouchardon エドム・ブーシャルドン(1698-1762)。
泉の中央部分の彫像。
真ん中に座っている女性はパリ、
その両側にいる像はマルヌ川、セーヌ川を表現しているのだとか。
これは、冬。
秋と冬を表す像の下の扉をくぐると、マイヨール美術館の入り口だった。
そこは、フランスの彫刻家、画家の
Aristide Maillol アリスティド・マイヨール(1861-1944)の美術館なのだけれど、
カナレット展に圧され、マイヨールの作品がとても少なかった。 規模縮小なのね。
でも、絵画 "Femme assise à l'ombrelle" はキレイだったな。
↑ 『パラソルを持つ、座った女性』?
しかし、やはりショップはカナレット一色。 マイヨールのものが皆無に等しく・・・。
常設展には、マイヨール以外の画家の作品もあり、藤田嗣治の絵も初めて見た。
『モンパルナスのモデル』。
で、肝心のカナレット展はというと大盛況のようで、団体さまも何組か。
でも十分楽しめた。 もらったパンフと、買ったミニ解説ブック。
カナレットは、ヴェニスの街のあちこちを何枚も、しかも微妙に見る方向を変えて描いている。
パンフの表紙にもあるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、
サン・マルコ広場とサン・マルコ大聖堂に鐘楼、ドゥカーレ宮殿、
カナル・グランデにリアルト橋などなど。
順に絵を観ていると、あ、さっきの絵はこのあたりから描いたんだ、とか、
この角を曲がるとあの絵の広場につながるんだな、とか、
頭の中にヴェニスの街の立体地図が出来上がっていくようだった。
描きこまれた街の人々が何をしているのか、細かな点をを1つずつ観ていくのも面白かった。
縦横サイズが私の背よりはるかに大きな絵が個人蔵だと知った時には仰天。
そんな絵を飾れるなんて、いったいどれほど大きな邸宅なんだろう・・・。
当時のものじゃないけれど、絵を描くのに使われたカメラ・オブスクラも実際に覗けた。
そうそう、波は、ふふ、やっぱり適当っぽかった。
でも遠目に見ると、それらしく見えるものもあったり。
逆に、ゴンドラが進んでるのに平らな水面・・・
これは波がいるでしょ、とツッコミたくなるのもあったり。
いつか同じ場所に立って、描かれた風景の写真を撮ってみたいなぁ。
その時まで、この解説ガイド、大切にとっておこうっと。
美術館を出て、DALLOYAUのショーウィンドーの美味しそうなお菓子を眺めた後、
さらに西へと歩き続けた。
↑ ゆえに眺めるだけでケーキ買えなかった・・・。
ひとり散歩はまだまだ続く。
さすがはパリ。隣家とずれてでっぱった壁にもアートがあるのですね。
青い扉は、「のだめカンタービレ」でパリロケをしたときにも、似たようなものがでていたような♪
by HIROMI (2013-02-08 19:03)
ダロワイヨのケーキ、食べたいですー(´ω`。)
by nicolas (2013-02-08 19:47)
パリの古い建物は本当に素敵な雰囲気ですね。
上質な街、という感じがしますよ。
これでしたら、街に誇りを持てますねえ。
あ、ヴェネチアにも行きたいんです...足腰の達者なうちに。
by ナツパパ (2013-02-08 19:53)
今年のパリの冬は寒いようですね。
by ぴーすけ君 (2013-02-08 20:25)
素敵な建物に素敵な絵。文化的ですねえ。
私は寒くてすっかりお篭もり状態です。
by めぎ (2013-02-09 02:04)
マイヨール美術館は企画展が入っちゃうとマイヨールの常設展示が極端に少なくなっちゃうんだね。彼の作品が観たくて出掛けると、それはちょっと悲しいかも。借り物が多いだろう企画展で撮影禁止は仕方ないけど、中庭だとか(もちろん、在れば・・・の話だけど)に撮影OKな彫刻とか、1つもないの?。
by yk2 (2013-02-09 07:32)
建築物に造詣が深い方には、とっても魅了的な街ですね♪ 目的をもってゆっくりお散歩出来るって素敵な時間です。
by 母ちゃん (2013-02-09 12:04)
パリの白い建物にそれぞれ取り付けられている扉の青や臙脂そして木の色が深くてきれい。
順に絵を見ていくだけで頭の中にヴェニスの立体地図ができるっていいなぁ、うらやましいなぁ。
by noriko (2013-02-10 22:19)
寒さも忘れそうな楽しいお散歩ですね。
カメラ・オブスクラのぞいてみたいです。
by luces (2013-02-10 23:17)
先の尖った金具、さすがパリですね ^^
昔からの建築物がいっぱい、ほんとう、馬が干草を食べているところが想像できちゃいます。
カナレット、初めてです。シャルダンやラ・トゥールなんかと同じ年代なんですね。本当、ちょっといい加減な書き方かも 笑
鯉のぼりの鱗みたいです。実物を見てみたくなりました。
by moz (2013-02-11 11:27)
寒そうです。><
手足の末端が冷たくなっている感じがする!けど大丈夫かな?
大きな絵画をじーっと観ていたい。
できればそこで眠りたい。
起きてもその絵画がいてくれるそんな環境に身を投じたいです。
そんな心境です。
by カエル (2013-02-13 12:39)
扉の前の馬のための金具、今ではちょっとした買い物袋やワンコのリードを引っかけるのにつかえそう、なんて考えてしまいました^^
大昔に使ったものの名残があちこち残っているのはなんだか楽しいですね~^^
by MOCOMOCO (2013-02-13 14:29)
→皆さま
『運河にさざ波』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 カナレットの展覧会に行くのに通ったのはグルネル通り。 ブランド店などブティックがずらりと並んでいたけれど、ミュージアムを越える頃には、ひっそりとしていて次の記事の丸屋根が見えるのでした。
→HIROMIさま
壁アート、写真撮って集めると案外面白いシリーズになるんですよ~。 「のだめカンタービレ」は日本で人気だったドラマですよね。 あまり分からないんですが、パリでのロケないら、エッフェル塔や凱旋門などの有名ポイントやアレクサンドル三世橋とか、写ってたのかな~。
→nicolasさま
ダロワイヨのケーキ、私も食べたい~。 アイスなら夏に食べたんですけどねぇ。
→ナツパパさま
看板や色遣いがシック。 深緑や葡萄色のペイントの店構えは老舗ぽっくて。 中にはそうでもない通りもあるのは確かなんですが・・・とにかくどの通りも犬の“落し物”が多くて。 ヴェネチアも古い町だから、ぶらりと歩くにはかなり楽しめそうですよね♪ 歩くというよりゴンドラに揺られてのほうがいいかな。
→ぴーすけ君さま
今年はまだマシかも。 2010年のほぼ1カ月まるごと最高で氷点下続きには参りました・・・。 ベランダ小庭の植物も大変だったし。
→めぎさま
ちょいとメトロで出かけると、賑やかな場所では雑誌の特集にあるようなファッショナブルなパリですからねぇ・・・なるべく裏の道をと思うんですが、急いでる時は近道。 運動不足だから、私は外に出ないといけなくて(笑)。
→yk2さま
実はこの時マイヨール美術館ではカナレット展の他にもうひとつ企画展があって(Alexis Poliakoffの空想ミュージアムPIXI)・・・。 展示の関係で窓も覆われていたし、あると聞いてた中庭も上から眺められなくて。 マイヨールの作品も、え゛、これだけ?!な状態だったので、次の記事へと続くのでした(笑)。 いつの日かマイヨール美術館へお出かけされる際は企画展のない時に是非どうぞ♪
→母ちゃんさま
建築物に詳しくない私でも、なんだろ、これ?って十分楽しめる街なので、観光ポイント間の移動にぶらぶらするだけでもお得な気分ですよ~。
→norikoさま
ヴェニスの立体地図が自然と浮かぶほど、カナレットは同じエリアでもあちこちの角度から(しつこく?)描いているので・・・。 でも絵の中に生きる人々は、同じじゃなく、いろんな暮らしが。 数年後に描いた同じ場所では、そこにあった植物が成長していたり。
→lucesさま
忘れそうで、忘れないキ~ンとした寒さでした(笑)。 カメラ・オブスクラなかなかよく見えるものでしたが、見えるのは室内の装飾で・・・。 デルフトのフェルメール・センターにあったのは、外に向けていたので、動く人も見えてましたよ~。
→mozさま
ドア回りにもいろんな金具や設備があるんですよ。 靴の泥落としとか、馬車の車輪が縁に当たるのを防ぐポールとか、キャンドルを置くニッチだとか、小便よけの柵とか(笑)。 カナレットの波、そうでしょ、鱗っぽいのもあって。 白い絵の具で、波!みたいな。 巡回展で日本でも開催されれば面白いのになぁ・・・。
→カエルさま
本当にこの日は寒かった~。 ブーツに帽子も必須。 いざという時のためにミニカイロまでポッケに忍ばせて。 カナレットの大きな絵に囲まれて眠れば、ヴェネツィアの壮大な夢が見られそう~。 ちゃぷちゃぷと波がたってたりね(笑)。
→MOCOMOCOさま
上向きにフックがついてればもっと役に立ちそうなんですが、下向きなんですよねぇ・・・。 そういえば、以前行ったパン屋さん、外にワンコ用のリードをひっかけるフックがついてましたよ~。 大昔の名残、何か分からないものも多いので、調べるのに本も買ってしまった私です(笑)。
by Inatimy (2013-02-13 18:04)
馬の金具もだけど真っ青な扉についてるドアノッカーも気になるな~
カナレットの描くベネチアの風景はガイドブックみたいですよね。
波が適当なのはご愛嬌ということで・・・
絵を見てたらベネチア行きたくなっちゃいました。
by miffy (2013-02-14 21:45)
→miffy さま
ドアノッカーのデザインも様々ですものね。 カナレットの絵の波は、ご愛嬌ですよね~。 他の部分はよくここまで詳細に・・・と思うほど街の人々の暮らしが見えてくるので、ま、いいかな。 ヴェネツィア旅行記、近いうちに拝見できる日が来るかしら♪
by Inatimy (2013-02-19 07:58)