テラスから、あれがパリ [フランス・パリの外]
同じ場所に立つ。
時間的な隔たりは大きいけれど、
この場所で見ていたものは、さほど変わりはないのかも。
抱えるものは皆それぞれ。
何を想っていたのかな。
パリから出たい・・・
そう思い、そばにあったガイドブックをパラパラめくる。
猫のトラチがいるから日帰りで、とアクセスや時間でふるいをかける。
RER(高速郊外鉄道)で行けるのなら簡単そう・・・と、目についた街がひとつ。
そこで、ようやく見どころに気付く。 あ、モーリス・ドニの美術館。
4月初旬、初めてサン・ジェルマン・アン・レーに来てみた日、
Kamoさんの狙いは他にあったようで、
天気がいいから美術館はまた今度にしよう、と外を歩くことに。
・・・というわけで、その2日後にモーリス・ドニの美術館。
RERの地下駅から上がってくると、目につくお城。
Château de Saint-Germain-en-Laye
サン・ジェルマン・アン・レー城。
これに向かい合うように建っているのが・・・
・・・Église Saint-Germain サン・ジェルマン教会。
建物は、新古典主義建築様式。
正面に柱が並んで、上に三角のペディメント。
パンテオンに、マドレーヌ教会、証券取引所・・・と、
パリでは、とってもよくみかける、この形。 でも、まだまだ私には新鮮。
これは、街の観光案内所でもらってきたもの。 気がつけば、ドイツ語だったけど・・・。
上空からの写真で、位置関係がよく分かる。
右にお城、左に教会。
その向こうに、ど~ん、と広がっている場所が・・・
・・・ここ。 お城の庭園。 人の大きさからも分かるように、ものすごく広い。
若い葉っぱが出始めたばかりの木々が、ずーっと奥まで続く。
この木は、ボダイジュ(菩提樹)のよう。
このまま東に向かって歩いて行こう。
春は、地面に落ちた木の影も美しい。 葉っぱと枝のバランスがいいね。
並んだ木の間から、何度となく、後ろを振り返って見る。
そのたびに、次第に小さく見えていくお城の姿。 右には教会。
自分の歩いてきた距離が確認できる。
人生の中でも同じことをしてるかも・・・。
やがて、目の前には・・・
・・・こんな風景が広がる。 手前に流れるのはセーヌ川。
その遠く向こうに、小さく見えてるポツポツ尖がってる建物群が、
新凱旋門のあるラ・デファンスあたり。
右の小高い丘のほうには、ちらっとエッフェル塔の先も見えてる。
パリが小さい。
そう思うと、なんだか嬉しくなった。
この左手の方を見ると・・・
・・・セーヌ川にかかる橋。 あっちはRER(高速郊外鉄道)が走る。
今いる場所は、お城の見晴らし台というのかな、
La Terrasse テラスと呼ばれる場所。
その中の、Petite Terrase プティトゥ・テラス。 小さいテラスのほう。
この写真を撮った時には、まだ何も知らなかったけれど・・・
・・・その2日後に美術館で買ったモーリス・ドニの本の中に、よく似た風景を見つけた。
"Avril" 1892 『4月』。
オランダのクレラー・ミュラー・ミュージアム所蔵と書いてあったけど、
これが展示されてるのは観たことがなかったかも。
歩いていたテラスというのが、手すりもある、まさにこんな感じの場所。
テラスのそばには、葡萄の木。 2000㎡に1,900本ほどあるらしい。
そこにあった解説板によると:
704年には、サン・ワンドリーユ修道院の領域であったAupecの斜面に、
その地方で美味しいと評判な葡萄畑があって、
1935年に、このル・ノートルの作ったテラスのふもとで、
葡萄栽培者の最後の収穫、最後の祭りが。
2000年に、その伝統に立ち戻って、この場所に葡萄の苗木を植えた・・・
・・・とか、なんとか・・・たぶん。
品種ピノ・ノワール由来の葡萄の苗木だそう。
写真の、この葡萄の木があるのは、
La Cuvée des Grottes ラ・キュヴェ・デ・グロット と呼ばれ、
意味は、「洞窟仕込みのワイン」なんだそうな。
途中、La Table d'Orientation オリエンテーション・テーブルという
ちょっと半円ほど出っ張った場所がある。
高度84mほどのよう。
写真の右のほうに、どっちの方向に何があるのかの案内表示もあるけど、
かなり絵や文字が薄れていた。
目の前にある、この中央の円も、今頃はキレイな花がいっぱい咲いているのかな。
テラスは、遠くまで、まだまだ続く。
あっちは、Grande Terrase グランド・テラス。
先にちらっと出てきたように、このテラスを作ったのは、
造園家 André Le Nôtre アンドレ・ル・ノートル(1613-1700)。
他に、ヴェルサイユ宮殿の庭園、テュイルリー庭園、
フォンテーヌブロー宮殿の庭園も手がけたんだそう。
ちなみに、このテラスは、幅30m、長さ2400m・・・ということは、2.4 km!
オリエンテーション・テーブルから、右手の方を眺めて撮った。
セーヌ川が二手に分かれているように見える。
でも、支流があるわけでなく、川の中央に島があるから。
何気なく撮ったこの場所も・・・
・・・おや、おや、またモーリス・ドニの絵に似たような場所が。
"Procession pascale" 1894 ・・・ 「復活祭の行列」。
他にも・・・
・・・"Portrait d'Yvonne Lerolle en trois aspects" 1897
『3面のイヴォンヌ・ルロルの肖像』・・・という意味かな。
買ったモーリス・ドニの本には、この絵は個人蔵とあるけれど、
2010年にオルセー美術館が新たに入手したそうな。
いつか見られるかな。
イヴォンヌ・ルロルは、モーリス・ドニのお友達であるアンリ・ルロルの娘さん。
(アンリ・ルロルについての短い説明は、こちらの記事に「庭のある館には」)
モーリス・ドニは、ここの風景が本当に好きだったんだなぁって思う。
さっき見てた葡萄の苗木の畑、ラ・キュヴェ・デ・グロット。
あっちに見えるテラスが、小さなテラスのほう。
奥の建物は、Le Pavillon Henri IV ル・パヴィヨン・アンリ4世。
デュマ、ジョルジュ・サンド、リスト、ミレー、ゾラ、ドーデ、サラ・ベルナール・・・など
有名人も宿泊したホテル&レストラン。
ここで、ジャガイモのスフレとベアルネーズ・ソースが生まれたんだそうな。
小高く盛り上がった緑の向こうに見えるのが、エッフェル塔。
案内表示によると、この場所から15000 m 先・・・ということは、15 km 先か。
モンパルナス・タワーも、あの丘の向こうかも。
あの丘のような場所は、Mont Valérien ヴァレリアン山。
162 m の高さだそう。
一方、エッフェル塔は、アンテナ含めて324 m 。
一番上の展望台で、276.1 m 。
ご覧のように、 山より高い。
その山の上には、1840年~1845年に作られた要塞があるんだそうな。
航空写真で見ると、星の形の砦。
芝生にまぎれて、ところどころに咲く白い花。 奥にある黄色いのはタンポポ。
白いパラソルの下では、屋外カフェ。
お茶したり、おしゃべりしたり、寝椅子で本を読んだり。
白い花は、並んだ木にも。
奥の木々は、芽が出たばかりの萌黄色。
テラスから木々の隙間に見える景色。
ポプラの木の向こうには、すぐセーヌ川。
川辺の大地では、トラクターが大忙し。 右へ左へ行ったり来たり。
働く車大好き。
セーヌ川に架かる橋を渡り、RER(高速郊外鉄道)がやって来た。
歩いては立ち止まり、テラスからの風景をただ眺める。
このテラス、この先までずーっと、まだまだ続くけれど、
我が家は途中で寄り道。
ふらふら・・・と、そそられる方向へ。
どうか、あと少し、散歩にお付き合いを。
なんて素敵。お城の建物の中よりも庭園が大好きな私には、この広大で綺麗に手入れされたお庭がたまりません。並木道がずーーっと続くお写真、ため息が漏れました。
Inatimyさんのお写真は、お人柄がとても出ていて、優しい感じで大好きです。
by Bonheur (2011-05-17 20:40)
一点透視図法とか二点透視図法のよいお手本になりそうな写真がいっぱい。
自然もいっぱいで心いやされます。
by HIROMI (2011-05-17 21:19)
春らしい、素敵な風景ですね。
いいなあ…心がのびのびします^^
一時間で行ける、気分が変わる散歩道…
私も探してみたくなりました♪
by ネム (2011-05-18 01:39)
パリが見えるとは、意外に近い場所にあるんですね。お住まいの街が遠くに見える感覚、なんとなく不思議です。
by 母ちゃん (2011-05-18 06:01)
ポダイジュ、きれいに剪定されているのですね。
並木道を騎士が馬に乗って城に向かったの・・・・。
どこでも映画の撮影ができますね。
by laf (2011-05-18 06:02)
きっちりと木が刈り込まれ、成形されたお城の庭園、フランスらしいなあ^^
木の陰を写したワンショットが素敵です♪
緑がいっぱいで、建物とのバランスが良くて、美しい街並みですね~♪
ここで観た景色がモーリス・ドニの絵の中にも見つかなんて、なんて素敵なんでしょう♪
by MOCOMOCO (2011-05-18 07:52)
サンジェルマン行ってみたい。
サンジェルマンは東京にあるパン屋さんしか知らないよ。
素敵な散歩に憧れます。
by まぐろ (2011-05-18 07:58)
きれいな菩提樹の並木が印象的です、
樹の影もとってもステキで 絵になりますね。
15km先のエッフェル塔が見えるもすごい事ですね。
by やよい (2011-05-18 09:33)
手入れが行き届いていますね。
あまりの広さにとても歩ききれないのではと思います。
by luces (2011-05-18 16:57)
ほんと、仰っていたように、緑がいっぱい!
あのパリの建物いっぱいで人がいっぱいの雰囲気とは全然違いますね~
これでちょっと深呼吸ができるという感じですね。
葡萄畑、きっと今頃はもっともっと青々としているでしょうね~見たいなあ♪
by めぎ (2011-05-18 17:40)
刈り込まれたポプラの並木道、ウィーンのシェーンブルンの庭にも。
芝生の中に沢山咲いている小さな白い花とたんぽぽも、一緒です。
by noie (2011-05-18 18:28)
淡い空の色に春を感じます。
並木道・・・その先をずっと歩くとどこにつながっているんだろう?って想像が広がるね。
木の影のシルエットも丹精で美しいなぁ。
『3面のイヴォンヌ・ルロルの肖像』を観にオルセーに行ってみたいな。
by てんとうむし (2011-05-18 22:41)
ジャガイモのスフレ 大好きです
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
何もかもが絵のように美しい
ところですね
by 雉虎堂 (2011-05-19 00:20)
ほんと、ドニの絵にある景色と同じですね。
クローラー・ミュラー・ミュージアム、私の記事のルドンの「殉教者」もここの
所蔵なんですよ。ゴッホだけでなく、いろいろ持ってるんですね。
ここのテラスもルノートルの設計なんですね。フランスを代表するお庭は、
全部、ルノートルっていうほどの人ですね。
私は、サンジェルマン城の考古学博物館に行きました。お城から
眺める庭も、私が行ったときは、雨にけぶっていましたが、良さそうでした。
どの写真を見ても、新緑のきれいな季節ですね。
by TaekoLovesParis (2011-05-19 00:44)
ああ…いいですねぇぇ(〃▽〃)
絵の中の光景を、実際に目にするのは贅沢ですよね。
行ってみたい…。
by pica (2011-05-19 15:17)
フランス式の庭園素敵ですね~
高台から見た景色も素敵過ぎます。
木の影、美しいですね~
野の花の咲いてる緑の絨毯に寝転がりたいな~
by miffy (2011-05-19 15:27)
フランスの郊外は行った事、残念ながらありません。ドイツの郊外に行きましたが、建物のセンスがいいですね。まるで、別世界のようなところもありました。フランスはパリに昔、7~8年前観光で行きましたね。 西欧の建物は‘センス‘がいい。
by 斎藤 ☆ (2011-05-19 21:31)
白いお花やたんぽぽ、並木道、
心地よい空気が、こちらまで伝わってくるようです^^
ちっちゃく見えるパリ、可愛い♡
by hatsu (2011-05-21 07:03)
モーリス・ドニの絵の中に流れる空気って独特ですよね。でも、こうして風景と重ねて下さると、しっくりきます。彼は、ここの空気の色ごと描いたのですね。
ラ・デファンスも、エッフェル塔も、 パリそのものが遠くに小さく見えるって、良い時間ですね(^^)
by JF (2011-05-21 09:54)
とっても優雅な風景~☆
そちらの香りと風が漂ってきそうです(^-^)
by 夢空 (2011-05-21 14:13)
→皆さま
『テラスから、あれがパリ』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 月曜のパリは26℃越えの暖かい日だったのに、火曜は涼しすぎる感じで予想最高気温が22℃。 出かける時に、着るものに頭悩ます日々・・・。
→Bonheurさま
すっごいですよ、このテラス。 歩いても歩いても、なかなか端まで到達しなくって、カ砂漠の中で蜃気楼をみてるかのよう(笑)。 私は背が低いので、写真にはきっと小学生目線なところもあるのかも。ふふ。
→HIROMIさま
一点透視図法とか二点透視図法・・・そうか、そういう視点で写真を見るのも新鮮ですね~。 普段、何も考えずに撮ってたりするので・・・。 この時も、夢中になって虫追いかけてたし・・・。
→ネムさま
パリに引っ越す前は、オランダですぐに牛や馬やヤギがその辺にいる所に住んでたので、のびのびできる風景がどうしても恋しくって(笑)。 風で漂ってくる動物臭は慣れっこ♪
→母ちゃんさま
パリの中心から20分ですから、結構すぐなんですよ。 あっというまに、見晴らしのいい場所へ脱出♪
→lafさま
お城の庭園っていうのもあり、木々のお手入れは、思ったより良くされてますね~フランス。 中世の雰囲気が残るお城、この中、博物館なんですって。 またいつか見に行こうかしら。 鎧とか飾ってるかも。
→MOCOMOCOさま
きっと今頃はチューリップの代わりに、素敵な花が咲いてるかもしれませんね~。 緑も濃くなって。 フランス式とイギリス式庭園があるので、またじっくり歩きに行かないと♪ 冬は冬で、雪の積もった庭園も、面白そう。 年中楽しめるいい場所ですね~。
→まぐろさま
パリの中にもサン・ジェルマン・デ・プレって所があるんですが、そこは教会を中心に大きな通りで、にぎやか。 サン・ジェルマン・アン・レーは郊外の静かな街でした♪
→やよいさま
逆に、エッフェル塔の上からだと、このテラスが見えるってことですよね~。 それもすごいかも。 エッフェル塔も凱旋門もまだ上には上がったことがなくって・・・・。
→lucesさま
一日中、散歩出来るくらい広いですよ~。 お弁当持って行って、ベンチに座ってサンドを頬張るのもいい場所♪ 街にはパン屋さんもいっぱいあるので食べ比べもいいかも。
→めぎさま
そうなんです、ここなんですよ。 20分離れただけで、こののんびりした景色。 窒息せずに脱出できました。 我が家は車がない暮らしなので、高速郊外鉄道で気楽に来られるのも魅力的。 葡萄畑も今頃、果房が見えて、可愛いかも♪
→noieさま
ウィーンのシェーンブルンの庭・・・なんて響きがいいんでしょう♪ ウィーンには行ったことがなく、Kamoさんの出張話でしか知らないんですよ・・・。 白い花、たんぽぽ、オランダにもありました~。 近所でしゃがみこんで撮ってたり。
→てんとうむしさま
『3面のイヴォンヌ・ルロルの肖像』公開されてるかしら。 オルセー美術館、改装工事中だからねぇ。 いつ終わるのかな・・・はてさて。 木のシルエットも、今頃はすごく大きくなってるかも♪ 濃い緑の並木は壁みたいかな~。
→雉虎堂さま
ジャガイモのスフレ、まだ食べたことがないけれど、なんだか美味しそうな予感だわ~。 食べる機会があれば、きっと雉虎堂さんのことを思い浮かべるはず♪
→TaekoLovesParisさま
クローラー・ミュラー・ミュージアム、結構充実してますよねコレクション。 ルドンは、いつもさらっと流して前通ってました(へへ)。 ルノートル、売れっ子庭設計士で当時は多忙だったでしょうね~。 彼自身は、どんな庭の家に住んでたのか、興味津々。 Taekoさんが行かれたサンジェルマン城の考古学博物館も中身が気になるところ。 きっとこの先なんどもこの街に来るかと思うので、天気の悪い日はこの中で過ごそうかな。 昔の暮らしも見てみたいし、ここの礼拝堂も素敵そう。
→picaさま
たまたま偶然、後で知ったので、まさか、絵の中の光景だったとは・・・。 これが美術館行って知ってからだったなら、また違って見えていたかも~。
→miffyさま
英国式庭園も敷地内にあるみたいで、そこにもまた行ってみたいなぁ。 テラスからの眺めはすごくよくって、何度来ても楽しめそうです♪ 冬でも、来るかもしれない。 ふふ。
→斎藤 ☆さま
小さな町や村が好きなので、ドイツもオランダもベルギーもスペインもオーストリアも郊外ばかり行ったかも・・・。 ガイドブックにも載ってなく、現地の友達も、それどこ?って言うくらいの・・・。
→hatsuさま
ずっと建物だらけのパリで、公園にいっても人のほうが多いし、ようやく、郊外にいい場所見つけました。 人が点になるほど広いのがお気に入りです♪
→JFさま
私もドニの美術館に来るまでは意識して絵を見たことがあまりなかったので、知るいい機会でした♪ いつかは、列車に乗って、パリから遠い地方にも出かけたいなぁ・・・日帰り出来る所で(笑)。
→夢空さま
パリ在住というと聞こえはいいけど、どうも私には似合わなくって。 やっぱり広い広い場所や緑が多いところに、たまには出かけないとスッキリしません(笑)。 排気ガスより家畜の匂いが好き♪
by Inatimy (2011-05-24 18:20)