教会の別の顔とは・・・ [オランダ]
天井から、魚や鳥がぶらさがっていると思ったら、教会のパイプオルガンの前にも、3体のフィギュア。 とっても不思議な生き物のような・・・。
前の記事と、このフィギュアだけで分かった人は、かなりの通。 すでに、むふふ、と笑ってる方々も何人かいらっしゃいそうですね。
実は、このSint-Jacobskerk(聖ヤコブ教会)は、現在、Jheronimus Bosch Art Center(ヒエロニムス・ボス・アート・センター)として使われています。 昨年、2007年3月26日にオープン。
で、ヒエロニムス・ボスって?
彼は、ボッシュとも言われてますね。 本名は、Jeroen van Aken(イェールン・ファン・アーケン)。 15-16世紀の宗教画家。 生まれたのは、1450年ごろとされ、オランダの南部にあるこの町、Den Bosch デン・ボス(正式名称は、's-Hertogenbosch )ですが、当時はまだ、オランダ・ベルギー・ルクセンブルクが一緒で、ネーデルラント王国だった頃。
で、パイプオルガン前のフィギュアをじっくり見てみると・・・
帽子をかぶったようなおじさん。 実際の絵では、こんな風に・・・
帽子のつばの上に、これまた奇妙な生き物をのせています。
くちばしを鎧からはみ出させたカエル脚のこちらは・・・
実際は、ちょっと、恐ろしい生き物だったり・・・。 頭に足をぶら下げ、太ももに矢が刺さってるし・・・。
で、矢に貫かれた卵から、亀のような顔と、ズボンをはいた脚を出しているこのかたは・・・見つけられませんでしたが・・・
どうせ、フィギュアにするなら、こんなウサギさんがよかったなぁ。 これらは、すべて、こちらの有名な絵に描かれています。
トリプティーク(三連祭壇画)になってる「Tuin der Lusten 快楽の園」。 写真では絵が見えてませんが、右の扉部分が上記のキャラが登場する“地獄”部分。
左部分の“Adam en Eva アダムとイブ ”。 この一部分、現在のアーティストによって織られた絨毯が、アート・センター併設のカフェに展示されています。
ちなみに、オリジナルの絵は、スペインのマドリッドにある、プラド美術館が所蔵。 アート・センターにあるのはオリジナルではありません。
そう・・・実は、ここに展示されている作品すべてが印刷のよう。 絵のタイトルが書かれているプレートには、オリジナル所蔵先が。 それでも、一同に集められたボスの絵を見られるとあって、とても人気。 ドイツなど近隣諸国からも訪れている人が多いです。 しかも、入場料には、音声ガイドのレンタル料金が含まれています。(日本語はないですが・・・。)
さらに、ついでに、ここのカフェで食べたものを紹介しますと、これは、tosti トスティー というオランダのハムとチーズのトーストで、私がオーダーしたのは、トスティー・ハワイ。 パイナップルが乗ってます。 味は、そのまま、パン・ハム・チーズ・パイナップル♪ 小腹が減った時に、ちょうどいいものです。
さて、さて、絵に戻りましょう。 ボスの絵のは、主に、教会の塔の部分を使って展示されています。
これは、「Laatste oordeel 最後の審判」。 ベルギーのブルージュにあるグルーニング美術館所蔵。
この絵の中央やや下あたりには、耳の長い生き物に乗り、くちばしの尖った白い姿の怖い人。 湯のみのような振り分け荷には、人が乗ってます・・・。
中央下部分には。 こんな訳の分からないものが描かれていたり。 蝶の羽のついた黒い顔の生き物は、読書してます。
こちらは、「fragment Laatste oordeel 最後の審判の断片」 。 ドイツのミュンヘンにあるアルテ・ピナコテーク所蔵。
右のほうにいるこの生き物が気になって・・・。 たまに家で見かける虫、シルバーフィッシュ(シミ)に似てる・・・。
これは、「Hooiwagen 干草車」。 このトリプティークをパタンと閉じると、外側の扉にあるのは、有名な「放蕩息子」の絵。 プラド美術館所蔵。 中央に、干草が山積みになった荷車が描かれ、その上には・・・
おぉ・・なんとなく、きれいな雰囲気・・・。 右隣にいる妖精みたいなものは、ともかく、あまり怖くない絵かも・・・と視線を下に向けていくと・・・
あ・・・やっぱりちょっと怖いかも。 でも、ヒエロニムス・ボスは、スゴイ画家なんですよ。 ピーテル・ブリューゲル(父)(1525-30年頃生~1569年没)も、ボスから影響を受けたと思われる絵「反逆天使の失墜」(ベルギー王立美術館所蔵)を描いてます。
で・・・川辺で、ぼんやりしているこちらの老人。
これは絵の一部を撮ったもの。 横にいる豚がかわいい。 これは、「Temptatie van Sint-Antonius 聖アントニウスの誘惑」 。 聖アントニウスは、最初に修道院のようなものを開いた偉い人のようで、豚とともに描かれることが多いそうでうす。 ポルトガルのリスボン古代美術館所蔵。
でも、同じタイトルでも、有名なのは・・・
こちらの「Temptatie van Sint-Antonius 聖アントニウスの誘惑」 。 これもポルトガルのリスボン古代美術館所蔵。 アート・センターである教会の地階に置いてあるこれは、ジグソーパズル。 ちゃんと、ショップに売ってます。
これが、パズルではない、展示されてた絵、トリプティークの中央部分。 真ん中で、紺色の服で膝まづいているのが、聖アントニウス。
私が、この絵で好きなのは、左の扉部分下にいるこの方。
青いとんがり帽子に、大きくたれた耳、くちばしには手紙のようなもの。 足元を見れば、スケート靴。
教会の片隅に、このフィギュアもあります。 見事な再現。 前記事で紹介した、教会の天井からぶら下がっていた鳥や魚のようなものたちも、この絵に登場するものでした。 いつかボスの絵を見る機会があったら、どこにいるか探してみてくださいね。
「聖アントニウスの誘惑」というのは、以前行ったオランダのハーレムのFrans Hals Museum(フランス・ハルス・ミュージアム)にも、Jan Mandijn ヤン・マンデイン(1500年頃生~1560年頃没)が、このボスの絵から影響受けて描いたものがあります。(記事はこちら)
展示作品全部をお見せすると、このミュージアムに来る楽しみを取り上げてしまうことになってしまうので、この辺で・・・。 いくつか、タイトルだけ挙げると、「Aanbidding der Koningen 東方三博士の礼拝」、「Tafelblad der zeven hoofdzonden 七つの大罪のテーブル画」、「Keisnijding 石の切除」などなど、その他いろいろ。
たっぷり堪能して、外に出ると、教会の前には、こんな立体作品(作者はチェックしてませんが)。
帰り道、町を流れる運河。 おやおや・・・・。 じーっと目を凝らして、見てみると・・・
こんなところにも、ヒエロニムス・ボスの作品関連のフィギュア。
この運河の反対側を見てみれば・・・・あ、やっぱり。
意外なところでも、この町が生んだ偉大な画家を、ちゃんとアピールしていて、とっても楽しい旅にしてくれます。 ちょっと、怖いですけどね・・・。 でも、フィギュアにすると、なんとなく、「千と千尋の神隠し」っぽい世界かな。
今夜、皆さんが、うなされませんように・・・。
あぁ~(ポン!)←手を打つ音♪
見たことがあります^^
近くで見ると、異世界への扉に近づいたよう。
by ぴーすけ君 (2008-07-04 07:53)
不思議の国のアリス、か浮かびました(^^)v
やっぱり、童話の世界~☆
by 夢空 (2008-07-04 08:06)
ボスという名前よりボッシュの方が個人的には永く記憶してきたので言いやすいです。ロンドンのナショナルギャラリーには絵から立体に起したフィギュアアをガラスケースの中で売られてましたが、なにぶん高価で見るだけでした。
展示作品の写真を満載してくれてありがとうございます。わくわくする展示で興奮しちゃいます。
by いっぷく (2008-07-04 08:55)
すごいですねえ。テーマパークな感じです。
by mustitem (2008-07-04 09:49)
私も「不思議の国のアリス」や「ハンプティ・ダンプティ」が浮かびました。
シュールな感じですね~。
Inatimyさんのこの記事、大作ですね。読み応えがあります!
by bonheur (2008-07-04 12:09)
教会がアートセンターとは面白いですね~(^^)
作品も面白いものばかり。
トースト、美味しそうです~。
by blume (2008-07-04 17:23)
ああ、この絵でしたか。
かなり怪奇的で怖い絵だと思いますが、こうやってオブジェになるとなんとなくかわいらしい感じもするのが不思議です。
庭に何気なくこんなのがいたら、びっくりするでしょうね。
by luces (2008-07-04 18:34)
ああ~、なるほど。
この方の絵は以前スペインのプラド美術館で見たような気がします。
(ちょっとグロくてシュールなので、あまり好みでなく、じっくりとは見てきませんでしたが^^;)
よく見ると面白キャラもいますね^^
千と千尋の世界と思えばちょっと愛着わいてくるかも^^
by MOCOMOCO (2008-07-04 19:38)
やっぱりボスだったんですね~
ボスの絵、好きなんで必ず見に行きます~
リスボンでもボス見たさに出かけて飛行機に乗り遅れるところでした^^;
ブリューゲルやボスが好きだっていうと友達に変人あつかいされました・・・
by miffy (2008-07-04 21:00)
そうだ♪
すっきりした~^^
なんとなく親しみがあるなぁ・・・どこかで見たことあるなぁ・・・と思っていたら、ミュージアムショップでした。
前記事を読んでから、頭の中ではたくさんのフィギュアと一緒に「聖ヒエロニムスの誘惑???」なんて言葉もぐるぐる旋回していて「でも、なんかちがうようなぁ・・・」と、もやもや~としていたのです(←知識が中途半端ね・笑)
p.s.家でピザをつくるときはトスティー・ハワイとそっくりなのを焼きます。
パイナップルとチーズとハムの組み合わせは美味しいですよね~♪
by てんとうむし (2008-07-04 22:12)
ちょっとコワいけど、
引き込まれる絵ですね。
フィギアになると、
カワイイのはなぜかしら?
とっても読み応えがありました^^
by hatsu (2008-07-05 06:44)
前衛的で楽しい教会ですね。今度行ってみたいです。
by Krause (2008-07-05 07:48)
この間、おっしゃっていたボッシュセンターですね。
ヨーロッパの美術館では、ボスの作品に会うことが多くて、特徴があるから、「あ、ボッシュ」ってすぐわかるのがうれしいです。
「快楽の園」、プラド美術館にありますね。
三連の観音開きふうになっているから、家具のよう。大きな部屋の中央に置かれていました。とっても目立つ位置。翌年、行ったときも同じ位置でした。
この春、行った、リスボンの国立美術館の代表作が、写真を載せてくださっている「聖アントニウスの誘惑」。細かいところにも何やらストーリーがあって、見飽きませんね。
フィギュアを売っているのは、見たことなかったです。
by TaekoLovesParis (2008-07-05 19:54)
見たいような、見たくないような、でも見ないと損するような…。
これらの絵を生み出す人の眼には、世界はどう映っていたのかしらと
不思議に思います。オブジェは日本の妖怪っぽく、愛嬌がありますかー??
by はっちん (2008-07-05 21:00)
面白い!!見に行きたいです~!!
プラド美術館に行ったのはもう9年も前なので
図録を見てみたら載ってました。
エル・ボスコと書かれてましたが、スペイン語読みですね。
by ミカチ (2008-07-05 21:48)
これもユーモアでしょう。
by michael (2008-07-05 22:34)
私も不思議の国のアリスが思い浮かびました!
日常の喧騒を離れて、1日中どっぷりこういうアートを鑑賞したいなぁ~。
by いさ (2008-07-05 23:39)
→takemovies さま、yukitan さま、nao さま、kojirou さま、yk2 さま、
rebecca さま、toraneko-tora さま、xml_xsl さま、Appledesu さま、
シェリーさま
nice! ありがとうございます。
→ぴーすけ君さま
なんとなく怖いんですけど、細かいので、何描いてあるんだろうと興味をそそられるんですよね・・・。 この地の画家とは、ごく最近まで知りませんでした・・・。
→夢空さま
不思議の国のアリスは、ちゃんと読んだことがありませんが、挿絵だけ見てたら、こんな不思議っぽい感じですよね。 卵みたいなのも出てきてたし。
→いっぷくさま
フィギュア高価ですよね~。 私も買えませんでした。 ここは、あちこちに点在するボスの作品を、オリジナルじゃないけどまとめて一気に見られるので、満足感が得られます♪ いつかどうぞ♪
→mustitem さま
教会という場所が、ますます、宗教画家ボスの作品の世界を盛り上げている感じです♪
→bonheur さま
オランダといえばチューリップ♪という図式の他に、もっともっとオランダの面白いところを紹介したくって♪ 花の季節以外の顔もいいものです♪
→blume さま
普通のトスティーも美味ですが、このパイナップルがさらにいけます♪ 林檎のタルト同様、あまりハズレのない食事♪
→luces さま
絵は怖いのに、オブジェになるとどこか、愛着が♪ キャラクター文化の日本人には、なじみやすいものがありますよね。
→MOCOMOCO さま
確かにグロでシュールかも♪ 私も、どこか怖いもの見たさで見ていた絵なんですが、教会に入った途端、ぶら下がったフィギュアに目が行き、カワイイ♪と思ってしまいました。
→miffy さま
ボスがお好きなら、ここは、飽きない場所ですよ♪ 教会にはカフェもレストランも併設されているので、お泊りで来られては?
→てんとうむしさま
すぐそこまで出てきそうで、何か違うようなモヤモヤ感で、ガッチャマンの歌詞を思い出そうとしてたシーンを思い出しました♪ てんとうむしさんが、道端で、ふと立ち止まって首をかしげ・・・ふふ♪
私もピザは、パイナップルのが好き~♪ シーフードも♪
→hatsu さま
ショップにあったフィギュアも、もっと安ければ買ってたかも♪
携帯ストラップなんかあったら、日本人にはたまりませんよね。
→Krause さま
意外な組み合わせかもしれませんが、教会と宗教画家ボスの独特な世界観が妙にマッチしていて、とても楽しめる場所でした♪ いつかどうぞ♪
→TaekoLovesParis さま
Taekoさんには、バレバレでしたね。 リスボンの国立美術館でも観てらっしゃるとは。 私は、マドリッドのプラドでは見たことあるのですが、もうかなり前になりますね。 バスにゆられて都会まで出て行きました。
→はっちんさま
人によって、これほどまでに違った世界の見方があるんだなぁ・・・とビックリしました。 はっちんさんのところの生徒さんにも、この先、偉大な人物になるかたがいらっしゃるのかも♪
→ミカチさま
プラド美術館、私は・・・あ、10年前かな。 図録は、日本に置いてきちゃったけど。 スペイン人は、面白いですよね。 名前までスペイン化。 エル・グレコもそうだし♪
→michael さま
教会離れが進むオランダでは、廃墟になる教会をつくらないために、いろいろと人が集まるように活用されてます♪ ギャラリーになったり、本屋さんになったり。 古い教会が、かなりたくさん存在するので、維持も大変のようです。
→いささま
絵を観てはランチしたり、ボスの映像説明を観てはお茶したり、塔の上から町を眺めたり・・・と併設のホテルでお泊りして、いつもの生活から離れてリフレッシュするのも素敵かも♪
by Inatimy (2008-07-08 16:48)
面白い~~!
グロテスクな感じの絵の中の登場人物がフィギュアでは何となく滑稽というか、可愛く?なっていて、探すのが面白いですね~^^
いいアイデアですね^^
by Ballacki (2008-07-09 08:58)
→Ballacki さま
怖いんだけど、フィギュアになると、なんだか平気、みたいなところありますよね。 日本だと、鬼太郎グッズみたいなものなのかしら・・・。
by Inatimy (2008-07-09 21:59)