流れる景色は白い色から [チェコ]
雪の中を走った。 正確に言うと、雪の風景の中を走った。
前方から後方へ、左右両サイドに流れていく景色は、ずっと白いまま。 助手席で、次々と、前や右側の窓ガラス越しにシャッターを押す。
オランダでは雪が積もることは、ほとんどない。 雪雲がぶつかる山がないので、雪が降ること自体、少ないかもしれない。 こんな中を走るのは、十数年前、長野で過ごした冬以来。
2009年1月中旬。
ここはチェコ。 周りを他の国々に囲まれた内陸の国。 山もあるので、雪もいっぱい降る。 冬は昼間でもマイナス10℃の日があるのはざら。 なのに体に感じる寒さは、オランダの方が厳しい気がする。 たぶん、それは、オランダの湿気と常に吹く風のせいかも。 乾燥した空気がたたずむチェコは、寒さの感覚が麻痺してきそう。
雪原の真ん中に、植物の栽培のための柵か、木枠か何か。 かれこれ、もう1時間近くは走ってるかな。
カーナビがあっても、いつも膝に用意する地図は、この日はなし。 チェコでは、プラハの地図しか買わなかった。 家を出て、高速道路に入って見えた標識には、西はプルゼニュ(ビールのピルスナー発祥の地)、東はブルノの文字。 チェコには大きな街があまりないので、自分の目的地が、どちらの街に近いのかが分かりさえすれば大丈夫らしい。
この日、向かったのは西。
チェコの高速道路は、まだまだ整備途中。 しかも有料。 3種類(1週間、1ヶ月、1年)の高速道路券ステッカーがあり、郵便局やガソリンスタンドで購入できる。 我が家が車のフロントガラスに貼ってたのは、1ヶ月のもの。 でも、プルゼニュまでは行かないので、すぐに一般道路を走ることに。
走っている道は、うねりがあったり、ガタガタだったり。 チェコは、はっきりとした四季のある国。 厳寒で凍ったり、夏の太陽に照りつけられて熱くなったりで、アスファルトの劣化が激しいのかも。 たまに、陥没してる部分もあるので、ハンドルが取られないよう、運転は要注意。 確か、一般道路の速度制限は、市街地外だと制限が90km/h。 高速道路だと、130km/h。
この日、家を出たのは朝8時頃。 冬の間の日の出は遅く、曇りの日なら一日中薄暗さが付きまとう。 揺れる車の中から、ちゃんとした流れる景色を撮れたのは、ある程度明るくなった頃、一般道路の走行時から。
そうそう、車を運転する上で、オランダと違って戸惑ったのは、一日中、朝昼夜、晴れでも曇りでも関係なく、チェコでは、走行時は必ずヘッドライトを点灯すること。 最初はなかなか慣れなくて、忘れることもあったっけ。 なので、乗ったらすぐ、「ライト点けた?」とKamoさんに聞くように・・・。
こんな丘を見ると、ついつい珍しく撮ってしまう自分が可笑しい。 平地のオランダに慣れると、大地の起伏、傾斜、凹凸はとても新鮮。 彫りが深い顔みたいで地球の表情が豊かに感じる。 あの斜面の土、ガリガリに凍ってるんだろうなぁ・・・なんて考えてるうちに、車は一瞬にして前へ、風景は遥か後方へ。
途中、いくつか通り抜ける村には、古い家の並び。 朽ちかけた壁の家もよく見かける。 それでも、どこか懐かしく感じるのは、建物の様式は違えど、スペインの田舎の村に似てるからかな。
写真に立派に写ってるのは教会。 それでも、チェコの国民の60%近くの人々は無信仰で、それに次ぐ約27%の人々がカトリック。 プラハの街にも教会があちこち建っているので、敬虔なカトリック信者が多いのかと思っていたら、これは意外な数字。 確かに考えてみれば、京都にもお寺が多いけど、皆が仏教徒だとは限らないものね。
この道路脇に見えた何本も並ぶ背の高い棒に、格子状に張られたネット。 さっき見た栽培用の柵と同じかも。 これは、ビールの原料にもなっているホップの栽培用。 調べてみると、ホップは、ツル性の多年生植物で、10~30年は引き抜かれることがないそう。 ということは、冬の間、根株は、この大地の下で眠ったまま春を待つ。 この場所も、きっと夏には、私よりもはるか頭上にまで葉先が伸びた、緑の壁になっているはず。 棒の立つ端から端まで、青々と生い茂ったホップの並び。
そういえば、ここに来る途中、ビールと同じ名前の村があったっけ。
遠く前方に白く漂う雲の海。 あそこには谷があるのかな。 車の中で聞いてた曲は、チェコで買ったCD。 引っ越すたびに心に増える音楽。 言葉が分からない暮らしでも、音楽の楽しさは、どの国へ行っても同じ。
雪景色で聴く曲といえば、日本ではユーミンが多かったかな。 音楽好きな父が聴いていて、荒井由実の名のレコードが家にあった。 クラッシックも、ポップスも、ラテンミュージックに映画音楽、そして演歌も、父から教わったものが多い。
この村は、さっき通った村より少し大きめ。 電柱の代わりに背高のっぽの街灯。 教会の時計が指すのは、9時20分の針の位置。 なのにこの薄暗さ。 前から走って来る車やトラック、ちゃんとヘッドライトを点灯。
ここは雪が解けて、ベージュ、茶色、緑の大地の色が。 オランダの軽快な色合わせもキレイだけど、ナチュラルな色合いは優しくなれそうな気がして大好き。 なだらかに続く丘をいくつも越えて、小さな村を走りぬけ、車は西へ西へ。
再び白の世界。 真っ直ぐ伸びる道をひたすら走ると、もうすぐ到着。 出発してから2時間弱のドライブ。 オランダに帰る前に、Kamoさんが行きたかったあの場所へ。
帰り道に、ビールと同じ名前の村をチェック。
村の端には、こんな看板。 ジョッキに入ったビールと、その右上には、ホップ。 中央に書かれたチェコ語は、「Nejlepší suroviny máme na dosah」。 辞書を頼りに訳すと「最高の原料が我々の手に」って、ところかな。
走りながらも撮れたビール工場。 この村の名前は、Krušovice (クルショヴィツェ)。 住人は600人余り。 このビール工場は、その地と同じ名前のKrušovice (クルショヴィツェ)というメーカーのもの。 ホップの畑が多かったのもこの村の周辺あたり。
ここのビールは、我が家の食卓にも一度登場。(記事「チェコでの食卓~1月~」は、こちら)
帰る頃には、雪はほとんどなくなって、赤茶色の土が広がる大地の姿。 流れる風景を撮りたい私のために、Kamoさんは速度制限をきちっと守って安全運転。 気長に待って、車線の数が増えた場所だけ、遅い前の車を追い越し。
でも、他の車は、狭い道でも、ちょっとでも対向車が見えないと、どんどん追い越し。 あーっ、トラックが来てるよ!とヒヤヒヤする場面も。 短気な人、多いのかな・・・。
まばらな並木道がぽつぽつ・・・やっぱり、オランダとは違うなぁ。
さて・・・どこに行ったのかは、また今度。 お楽しみに。
東欧の落ち着いた雰囲気、いいですね。
by Krause (2009-06-30 10:03)
落ち着いた静かな時間が流れている感じが素敵ですね♡
ホップ畑をみたあとにビールをいただけたら
最高に美味しいでしょうね(*^^)v
by chercher (2009-06-30 12:12)
昨夜は蒸し暑かったですねえ。雪景色はなんだか新鮮です。
あの追い越しはヒヤヒヤしますよね~巻き添えにしないで!と何度も思いました。
by めぎ (2009-06-30 15:39)
この時期雪景色を見ることになろうとは。
チェコの風景は(冬だったから余計に?)オランダとは対極ですね。
ビールの生産が盛んなのですか?
(ビール=ドイツとの思い込みがありました。)
Kamoさんのお目当ての場所はいったい何処でしょう?
楽しみにしています。
by Roseblanche (2009-06-30 16:28)
寒そうな景色で西方面だから温泉のあるカルロイバリ?ってどうでしょう。
こんな様ななだらかな道を行った覚えがあるんですが。
by いっぷく (2009-06-30 16:31)
私はとにかくチェコで雪が降るということ自体が驚きで、
冷静に考えてみると地理的にそうだなと分かるんですけども。
フランスで見たものとはまた一味もふた味も違った雪景色だと思い、
我を忘れて眺めていました。
by marine (2009-06-30 20:25)
うわぁ、寒そう~!
寒がりの私は、旅行で行くなら、やはり緑の大地が見える時期が良いなあ、と思いました。Kamoさんが行かれたかった場所とは?(^-^)
by Bonheur (2009-06-30 20:56)
毎日蒸し暑いので雪景色大歓迎です~
見てるだけで少し涼めました^^
日中もヘッドライトをつけるのを初めて見たのは北欧でしたが、白夜の頃だったのでなんか変な感じがしました。
雪景色の中、絶対に行ってみたかった場所ってどこでしょう?
by miffy (2009-06-30 21:46)
この時期に雪景色☆
涼しくなりました(*^^)v
by 夢空 (2009-06-30 21:54)
最初の雪景色、今見るとビックリですね~。穏やかなオランダとは違った光景ですが、もの悲しい印象です。
by 母ちゃん (2009-06-30 22:02)
いっしょにドライブしている気分♪
「凍てつく大地」という雰囲気ですね~・・・。
どこまでも続く風景に見えるけれどアップダウンがあるのは、やっぱり干拓地のオランダと違うんだと思ったり。
目的地はどこなんでしょ?
続きも楽しみです^^
by てんとうむし (2009-06-30 22:29)
冒頭からカッコイイ写真ですね☆
これぞ、ヨーロッパって感じです。寒々として、だけど凛として。
で、どちらへ?
by pica (2009-06-30 23:04)
ムシムシの日が続いているので、とても涼しげでNiceでした。
夏と冬とは全然景色が違うのでしょうね。
どこに向かわれたのでしょう・・・楽しみです。(*^^*)
by noie (2009-06-30 23:40)
この時期に雪?と思ってしまいましたが、1月のことだったんですね。
暑いときに見る雪景色ってのも別世界のようでいいですね。
by Jalana (2009-07-01 00:59)
ああそうか。オランダではあまり雪が降らないのですね。
モノクロの雪景色の写真、ちょっと寂しげではありますが、涼しそう♪
ずっと荒涼とした畑の後、ちらっと現れる小さな町にほっとしたりして^^
それで、この後どちらへ?
by MOCOMOCO (2009-07-02 07:36)
時間がゆっくーり流れているように思えるのは、
雪景色だからかな?
西へ西へ、どこに着くのかなぁ。
楽しみです^^
クラシックにラテンに演歌。。。 お父さんカッコいいですね♪
by hatsu (2009-07-03 06:14)
オランダは、高速はフリーなんですか?
フランスは有料です。料金所がポツポツあります。
スイスは1年間有効のスティッカーを買います。
高速がフリーって、なんかいい響きですね〜。
さてさて、どこへ行かれたのでしょうか?
by どらっち (2009-07-03 06:34)
→皆さま
たくさんのnice! & コメントありがとうございます。
ただ、ただ、白い景色を走る車の中から撮ったものなのですが、その道程も飽きることなく楽しくて。 薄暗い曇り空も、ヨーロッパの冬らしいなぁって感じです。 オランダは、ここ1週間続いた25℃を越える日々も終わり、最高気温19℃に。 このまま秋になったらどうしよう・・・。
→Krause さま
欧州といってもやっぱり地方によって特色ありますね~。 東欧の歴史ある重厚さも素敵です♪
→chercher さま
チェコのビールも美味しいのがいろいろ。 どんどん日本に広まるといいなぁ。 緑のホップ畑を歩いてみたかったです。
→めぎさま
蒸し暑い日になりましたね~。 でも我が家は地階なので、まだマシでした。 冬の寒さは厳しいけれど、夏はいいかも~。 追い越しは、心臓に悪いですよね。 巻き添えだけは逃れたい・・・とヒヤヒヤ。
→Roseblanche さま
どんどん過去の思い出と化していってますが、まだ紹介しきれてない写真が残ってるんですよね。 せっかくなので、最後までと・・・年内で終わるかしら・・・。 ビールと言えばドイツ、のイメージが強いですが、オランダもハイネケンビールがあるし、ベルギーもアルコール度数が高い濃厚なビールがいくつもあるし、チェコもビールが美味しいです♪ 私の好みは黒でした。
→いっぷくさま
結構同じところを訪ねているので、もしかしたら、ここも・・・?とドキドキしてたら、やっぱり・・・むふふ。 大正解でした♪ カルロヴィ・ヴァリ♪
→marine さま
実は私もチェコの冬って雪降るのかな、それとも寒いだけかな、と楽しみにして引っ越していきました♪ 子供の頃は長野で冬休みを過ごしていたので、雪を踏むのがすきなんですよね~。 marine さんがこの冬を過ごされる場所は、どんな冬でしょうね。 またお話を聞かせていただけるのを楽しみにしてますね♪
→Bonheur さま
気温は数字的には低いんですが、体に感じる寒さはオランダの方が寒いんですよ。 かなり空気が乾燥してるので、寒さの種類が違うよう。 緑の多いチェコのほうが断然写真がキレイでしょうね~。 雪の時期はモノクロのようで・・・・。
→miffy さま
北欧の夏も不思議でしょうね~。 オランダでも夜中12時ごろでも夏至のあたりは、西の空が薄っすら明るいですから。 いつか行きたいなぁ。 シーフードに、雑貨に、布に・・・と思わず、北欧特集の雑誌をチェック♪
→夢空さま
まだ、いろいろチェコねたが・・・。 オランダも短い夏満喫中ですが、月曜から19℃の予想で・・・せっかく出した夏服、早くも片付け!?とTVの天気予報に向かってブーイング。 8月も暑くなればいいなぁ・・・。 アフリカだと、もっと暑いでしょうね。
→母ちゃんさま
オランダでもたまに雪が積もるんですが、やっぱりどこか違いますね、この冬景色。 オランダ、冬でも、野に牛がいるし。 チェコの冬って、そうそう、もの悲しさ、ありますね。 光も違うかな。
→てんとうむしさま
後部座席に乗って、一緒にドライブ~。 コート膝に掛けてないと冷えてくるよね~、あ、このラジオの曲、あのCDのだよ~、なんて、話したり、想像ふくらむ、ふくらむ♪ イモウトがアネサマをご案内♪
→pica さま
運転に集中のKamoさんに後で見せてあげよう、といろいろ撮っちゃって。 でも、道が悪いし、揺れるし、薄暗いし、で、手振れした写真も多いんですよ・・・。 寒いけど、新しい土地は、ワクワクつきのお出かけで、楽しい遠足気分♪
→noie さま
あっという間に戻ることになって、冬しか見られなかったのが残念ですが、きっと夏の緑が多い風景も美しいものでしょうね~。 ホップ畑、見たかったなぁ。
→Jalana さま
そうなんです、1月のお話で・・・チェコねた、まだ終わってません・・・。 そちらは年中暑いですものね。 ちょっと、冷やっと涼しい空気、味わっていただけました?
オランダ、25度越えの夏らしい日々が終わり、しばらく最高19℃に戻りそうです。 8月にまた夏の週が来ればいいなぁ。
→MOCOMOCO さま
寒い日は多いんですが、雪があまり降らないし、降っても強風で吹き飛ばされてしいまうんですよね・・・。 冬のこの寂しげな雰囲気の分、夏の色がますます美しく見えたり、太陽がありがたく感じられたり♪ 夏もきっといい景色でしょうね~。
→hatsu さま
日本の時間の流れに比べると、夏も冬も、雪景色でも、時間の流れはのんびりゆったりかも♪ 西へ、西へ・・・西遊記みたい、ふふ。 父は、多趣味で・・・他に美術館、海に山と遊びに大忙しでしたよ~。
→どらっちさま
オランダは高速道路はフリーです♪ でも私の知ってる限りでは、西のゼーラント州にある、海底トンネルが連続してある部分は、5ユーロだったか徴収ありました。 水の底にトンネル作って車が通るようにするのって、大変ですもんねぇ。 スペインは一部だけ料金所があって有料、オーストリアもステッカー制でしたね。 高速道路がタダで走れるって、ホントにありがたいです♪
by Inatimy (2009-07-06 06:37)