像と自分の場所

 どうして分かるの？

 どうしてって言われたって、こっちに入口があるって分かるよ。

 そんなやり取りを交わしながら、歩道を歩く。　
 ふたりの目の前に現れたのは、公園の門。

 Jardin du Luxembourg リュクサンブール公園。

 普段、なんとなく地図を眺めていたから、いつのまにかメトロの駅から
 どちらの方向に、この公園があるのか覚えていた。

 緑が多い夏の公園。　
 快晴だったら、太陽の光に照らされてキラキラして、まばゆい木漏れ日だったかも。

 Paul Verlaine と文字が彫られていた像。　
 詩人のポール・ヴェルレーヌ（１８４４－１８９６）ってこんな顔してたんだ・・・。

 公園に行こう、とKamoさんが言った。　いいけど・・・と私。

 ７月は、迷うことが多かった。　８月は、多忙が続き、まだがんばっていた。
 ９月は、もうそろそろいいんじゃない？って、こころにバカンスをあげようかな。

 詩人Gabriel Vivaire ガブリエル・ヴィケール（１８４８－１９００）とある。
 フランスで有名な人なのかもしれない。

 詩人José-Maria de Heredia ホセ・マリア・デ・エレディア（１８４２－１９０５）は、
 キューバ生まれのフランス人。 フランス語読みだと、ジョゼ＝マリア・ド・エレディアかな。

 自然に目についたから撮り始めていたけど、なんだか、さっきから像が多い。

 後でガイドブックを見たら、このリュクサンブール公園には60体以上の彫像があるそうな。
 全部撮らなくてよかった・・・。

 中には、自由の女神も。　サイズ小さめ。　
 とっても人気者のよう。　観光客が、代わる代わる記念撮影をしてた。

 1900年のパリ万国博覧会の時に、彫刻家のオーギュスト・バルトルディが、
 この像をリュクサンブールのミュージアムに寄贈。　
 彼は、この像をもとに、ニューヨークにある自由の女神像を作った。　
 1906年に、この像はリュクサンブール公園に設置されている・・・

 ・・・みたいなことが書いてあるのかな・・・と自信なさげ。

 でも、この像、100年以上も、ずっとここにいるんだ。

 ふと見た像の左側の散歩道。　自由の女神像のそばで、のんびり、くつろぐ人たち。 
 思いのままに椅子を動かし、好きな場所で、好きな方向をむいて。
 見ると、この公園には、たくさんの椅子がある。

 公園の一角では、ペタンクに夢中なおじさまグループ。　
 ほら、向こう側でも淡いグリーンの椅子が観覧中。　

 弧を描いて宙を流れる銀色のボール。　
 この後、見事に他の人のボールに命中し、それを弾き飛ばしていた。

 ルールは全く知らないけれど、とっても面白そうなので、ちょっと試してみたい球技。

 このボールの持ち方からして、なんだかとっても技あり雰囲気。
 いつか真似してみよう。

 テニスコートのそば。　右へ、左への、ボールのラリー。　木陰で静かに見てる椅子。

 ねぇ、あの話、聞いた？

 向かい合ってお話中の椅子とベンチ。

 話題によって、あっちとこっち・・・ふたつのかたまり。

 これから、どうする？

 立ち去った人たちが残した作品。

 バカンス休暇中のテーブルと椅子も。　でも、奥の１脚は、さっきまで仕事してたもよう。

 暮らしの中で、座る場所は、いつの間にか決まってる。
 いつもの席に、いつもの人がいないと、どことなく寂しく感じたりする。　

 あの場所には・・・もう、あの人は座っていないんだ・・・。

 今頃、どうしているだろう。
 私の席は、まだあるかしら。

 忙しくしてたから、あまり考えなくて済んでいた。
 でも、忙しすぎて、気晴らしが必要だったのも確か。

 連れてきてくれてありがとう、と心の中でそっと呟き、左隣を歩く。

 雪の中のエッフェル塔は、建設途中。　この様子は、1888年ごろかな。　
 1889年にはパリ万国博覧会のシンボルとなったから。　

 Henri Rivière アンリ・リヴィエール（１８６４－１９５１）の
 「エッフェル塔三十六景」シリーズより、
 《建築中のエッフェル塔、トロカデロからの眺め》 （１９０２）を使った、何かの冊子。

 ジャポニズムに影響を受け、フランスの浮世絵師と言われてるそうな。　

 たまたま通りかかった、この店のショーウィンドーには、
 これからのヒントが隠されてるような気がした。

 

 今までも、何気なく開いた本、何気なく見た場所で気になった言葉は、
 その時の自分に必要な道しるべだったからね。

この冬、雪のエッフェル塔が楽しみだ。

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コメント 21

緑に囲まれた公園、素敵ですね～＾＾
銅像の周りを囲むように植えられたお花も綺麗♪
無造作にただ並んでいる椅子やテーブルも、Inatymyさん目線の写真からは何かストーリー性を感じるから不思議ですね＾＾
雪のエッフェル塔・・・私も楽しみにしています♪
by MOCOMOCO (2010-08-31 11:35) 

パリに行くとかならずリュクサンブールをお散歩します。植物がたくさんあって、落ち着きますよね。
お写真、夏なのに、少し寂しいような、次の季節の気配を感じますね。お天気のせいかな。
人のいない椅子やベンチ、「前に座っていた人はどんな人だろう？」と想像することが私もあります。公園の椅子も、色んな人生を見てきたのでしょうね。
私も雪の季節のエッフェル、Inatimyさんの記事を楽しみにしています。
by Bonheur (2010-08-31 12:27) 

最後の写真のエッフェル塔の絵、
とっても好み〜♪
by ぷーちゃん (2010-08-31 19:59) 

エッフェル塔三十六景ですか。
フランスにも日本のカルチャーがしっかり影響与えてますね。
ここ最近、フランスに影響与えた日本のカルチャーで知らないし、、。
by aranjues (2010-08-31 21:22) 

日本は連続熱帯夜記録更新中です(；一_一)
緑が涼しげですね～（＾－＾）
by 雉虎堂 (2010-08-31 22:39) 

ここにも、自由の女神がありましたか？
セーヌ川の横にもありましたよね。
by テリー (2010-08-31 23:06) 

最近散歩もしてないな～
こころにバカンスをあげる・・・いい言葉ですね！
休みがあっても本当に心が休んでいるかといえば、なかなか・・・
by めぎ (2010-09-01 03:19) 

パリの空の下で、ぽつり空いた椅子に、誰かを思い出していたのですね。
その、Inatimyさんの席、今も有るといいね。

街角のショーウィンドウに、アンリ・リヴィエールを見つけたのは、全くの偶然だったのかな？。特派員に任命しているだけあって、さすがいなちゃん、その手のものへの嗅覚が素晴らしい！（笑）としか云い様がありません（＾＾。去年、葉山の神奈川県立近代美術館で開催された彼の展覧会を観たけど、とても良かったです。『自然の様相 夜の海』って絵がポスターになってたんだけど、美術館のロケーションとぴったりでね（参照→http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2009/riviere/index.html）。

いつも時間が無くって、結局１度もじっくり観られていないんだけど、オルセーの写真展示室にはリヴィエールが撮ったエッフェル塔建設当時の写真が、何枚か展示して有るはず。版画と同じ構図のがね。それと、版画は展示の状況がよく分からないんだけど、オルセーも勿論だけど、フランス国立図書館がすごくいっぱい持ってるみたいだよ。
by yk2 (2010-09-01 04:52) 

椅子とベンチ♪おもしろーーーい☆
うんうん、会話しているようだし(^.^)
視点が面白くてﾟ+｡(σﾟ∀ﾟσ)⌒Nice♪☆
by 夢空 (2010-09-01 07:50) 

緑色づくしの記事に、私の身体も緑に染まりそうな。
（だって、一緒に散歩させていただきましたからね♪）
心に何かかかるものがあるときには、
無性に歩くことが一番のような気がしますね。

おしゃべりしている椅子たち、とってもチャーミング。

アンリ・リヴィエールの絵、素敵ですね。
エッフェル塔以外のも、見てみたいです。
by Roseblanche (2010-09-01 16:10) 

ゲートボールよりペタンクの方がおしゃれだなー。

by luces (2010-09-01 18:21) 

詩のような流れるInatimyさんの文章。公園と椅子の写真。素敵です。たまには気分を変えられる心のバカンスって大事なんですね。ご多忙の様子、どうぞ御身体お大事にね。
by rino (2010-09-01 20:23) 

リュクサンブール公園、私もパリらしい場所！って思ってます。
2枚目の公園全体の写真、すてきですね。
ここは、ベンチが木と同じグリーンなのが落ち着いていいですね。
アンリ・リヴィエールは、東京のホテルニューオータニの中の美術館も
コレクションを持っていて、2年に1回、企画展として見せています。
by TaekoLovesParis (2010-09-02 00:57) 

リュクサンブール公園素敵ですよね～
初めて訪れた時、あまりの像の多さに驚きましたが一つずつ見て歩きました。
まだフィルムの時代だったので、全部の写真は撮ってませんけど・・・
緑が多くて気持ちのいい所ですよね～
近くのホテルに泊まった時には朝の散歩もしましたし、お昼にはベンチに座って行き交う人を眺めながらサンドイッチを食べたりもしました。
雪の頃のパリは訪れた事がないので、Inatimyさんの記事を楽しみにしてます～
by miffy (2010-09-02 18:09) 

誰も座っていないけど、椅子同士が、おしゃべりの続きを楽しんでいる。。。
少し前までの光景が目に浮かんできそうです。
この公園は、何度か散歩したので懐かしいです。
by noie (2010-09-02 22:18) 

公園の名前の由来ってなんなんですかね？
国名のルクセンブルグと関係あるのかな？それとも人名か？

この銅像が自由の女神の元祖なんですね。
by Jalana (2010-09-02 23:04) 

椅子がそこに座っていた人の気配を語ることってあるよね。
しばらく離れてしまうと、そこにはまだ自分の居場所あるのかな・・・って不安になることも。
やっぱり前すぎず後ろすぎない位置のシートが必要ね。

アンリ・リヴィエールの 「エッフェル塔三十六景」素敵☆
今年の冬はInatimyさんはこんな景色の中にいるのかしら♪
・・・でもとっても寒そう。。。
by てんとうむし (2010-09-02 23:47) 

椅子たちのおしゃべりに、Inatimyさんの感性ってすごいなあ…と改めて感じています。緑が美しい公園で、歩いているだけで心がリフレッシュしそう。ペタンクに興じる人たちも楽しそうですね！お忙しい毎日、ご無理なさいませんように。
by tanpopo (2010-09-03 04:54) 

→皆さま　
たくさんのnice! ＆ コメントありがとうございます。　
我が家のバルコニーも緑いっぱいにしたいなぁ、と思いつつも、さまざまなことに追われなかなか手がつけられずに。　せめて春に球根植物が咲くように、これだけはしっかりしようっと・・・などと思う日々。　種もいろいろあるし、土も買ってあるし、ないのは時間・・・。

→MOCOMOCO さま　
座るところが多い公園なんですよね。　しかも固定されたベンチ以外にも、好きなところに持っていける椅子がいっぱい。　おお気に入りの場所を見つけて、読書してらっしゃる方々もいっぱい。　こんな息抜きの場所があるっていいですよね。　雪、この冬、降ってくれるといいな♪

→Bonheur さま　
欧州の夏は短いですねぇ。　８月のパリは本当に数えるほどしか、３０℃越えの日がなく・・・でも、ま、オランダよりは暑いけど。　久々に半袖が大活躍。　日本にいた時は、５月から１０月終わりまで半袖だったけど、パリじゃのべ１カ月あったかな・・・？　オランダでは１～２週間だったかも、半袖着た日々・・・。　雪のエッフェル塔、紹介できるといいな～。

→ぷーちゃんさま　
アンリ・リヴィエールの絵、いいですよね。　私は、この絵をネットで見た記憶はあったんですが、画家の名前を覚えてなくって、この写真を撮った日から検索の日々でした・・・。　名前覚えるの苦手です～。

→aranjues さま　
フランス人は、今、ビートたけしが好きみたい。　北野武の映画とかね。　あとマンガはスゴイですよ。　大型店舗の本屋さんいいくとフランス語に翻訳された日本のマンガがずらりと並んでいます。　地理的に遠く離れた日本の影響って面白いですね～。

→雉虎堂さま　
この夏の日本の暑さは、さすがに怖いものがありますね。　いつから熱帯になったんだろう・・・って思います。　もはや温暖湿潤気候じゃない・・・。　室外機からの熱もすごいんだろうなぁ。

→テリーさま　
セーヌ川の横にあるって、昔聞いたことがあたんですが、リュクサンブール公園にもあったなんて知らなくて。　NYの大きな自由の女神像すらまだ見たことがないです・・・。　映画では、よく波にのまれたり、凍ったりしてる姿は見てますけどね（笑）。

→めぎさま　
めぎさんも多忙な日々ですよね～。　我が家はまだ夏休みもとってなくって。　この先の秋はもう少し時間的余裕が出来そうだから、こころ休めたいです。　ここ数年、引っ越し続きで環境がころころ変わって、疲れちゃって。　歳かなぁ・・・。

→yk2 さま　
思い出す顔はいつも笑顔なので、それに救われますね。　ふふ。　この公園に行った日にアンリ・リヴィエールを見つけたのは、まったくの偶然。　何気なく前を通り過ぎて、おや、待てよ、これみたことあるよ、と戻って写真に撮ったんです。　名前が思い出せず苦労しました（笑）。　オルセーでリヴィエールが撮ったエッフェル塔建設当時の写真、いつか探してみようっと。　フランス国立図書館も行かなきゃね。　リヴィエールと同じ構図の写真は勘弁してください～。　でもいつか機会があってブルターニュに行ったらちょっと意識して撮るかも（笑）。　葉山でトライしたyk2さんに対抗意識燃やしたりしてね。

→夢空さま　
なんちゃってカメラマンになって、ちょっぴりアートっぽい雰囲気に挑戦♪　今はもうそろそろ落ち葉が舞い始めてるのかも。　秋の始まり。　スーパーにはキノコや葡萄が山積でした♪　・・・と、やっぱり芸術より食欲の秋の私です（笑）。

→Roseblanche さま　
夏休みがまだ取れてなくって、本当に忙しい我が家です・・・。　秋が深まる頃には、ゆっくりできるかなぁ・・・。　また、その頃には、公園歩きしてみようかな。　秋色の写真もまたいいかもしれないですね～。　アンリ・リヴィエールの絵、もっと私も観てみたいです。　Fnacとか本屋さんに、何かあるかしら。　探さなきゃ。

→luces さま　
逆にゲートボールはこちらでみたことがないかも。　日本じゃペタンク専用の場所がまだあまりないのかな。　ボールの落下で地面がへこむと、次にゲートボールするのに支障が出るみたいですね。　私もペタンクしてみたい～。

→rino さま　
ようやく忙しさにも区切りが付いてきました。　温かい言葉をありがとうございます。　秋は少しゆっくり休んで、またいっぱい写真を撮ってみようかな。　夏のバカンス、我が家はまだなんですよねぇ・・・。

→TaekoLovesParis さま　
もうそろそろ葉っぱの色も変わる頃なので、リュクサンブール公園もどんなふうに秋らしく変身するのか、それも楽しみなんですよね～。　私もこの公園が今のところ一番好きかも。　アンリ・リヴィエール、ホテルニューオータニもコレクションあるんですか・・・へぇ～。　フランスでは知名度どうなんでしょうね。　また誰かに聞いてみようかな。　

→miffy さま　
リュクサンブール公園は、いいですね～。　モンスーリ公園は起伏が激しくって歩くの疲れるし、ベルシー公園は、人が多すぎるし。　今のところ、リュクサンブール公園が一番かも。　フィルムの時代かぁ・・・今デジカメだから、出かけたら軽く１００枚撮っちゃうこともあるけど、昔は、ケチって一日３６枚撮ったら多いほうだったかも、私（笑）。　雪、この冬、降ってくれるといいな。

→noie さま　
乱雑に並んだ椅子も、あ、誰かがここに座ってたんだ、って分かるので、面白いものですね～。　何話してたんだろ、なんて考えたりして。　おしゃべり好きなフランス人、話がなかなか終わらず、話題が流れるままに楽しんでいたのかも♪　

→Jalana さま　
この公園、もとはリュクサンブール宮殿の庭園だったみたいですよ。　その宮殿は最初ピネー＝リュクサンブール公フランソワの邸宅だったもので、後に居城に改築したそうな。　なので、名前の由来はそこからのようですね～。　宮殿で暮らす・・・スゴイな。

→てんとうむしさま　
前すぎず後ろすぎない位置のシート・・・ふふ。　君の隣の席は空いてる？なんて聞いちゃうのよね。　冬に雪の中のエッフェル塔の写真を撮ってみたいけど、寒いかな～。　でも、まだミニカイロがたくさん残ってるので、それ持参でのぞもうっと♪　ほかほか、ぬくぬくでね。

→tanpopo さま　
何枚か椅子の写真を撮ってるうちに、もう誰も座ってないのに、話声が聞こえてくるような雰囲気を感じたんですよね～。　そういえば、椅子から始まるお話も昔書いたっけ・・・といろいろ撮りながら思い出したりして。　公園で気分転換できました♪　忙しい日々にも終わりが見えてきたので、ちょっとゆっくり出来るかな。　温かい言葉、ありがとうございます。　
by Inatimy (2010-09-09 19:16) 

おお!ペタンク＝!!前に私もリュクサンブールでやっている人を見かけました。
メッカ?なのかな。
Inatimyさんの文章って、不思議な魅力があります。
なんだか、アルバムを見ながら一緒に思い出しているみたい。
by yuka (2010-09-19 15:08) 

→yuka さま　
確かペタンクのセット、お持ちでしたよね？
いつの日か一緒に遊んでもらってもいいかしら。　教えてくださいね～。
ふふ、文章をほめてもらって嬉しいです。　
子供の頃は、作文、苦手だったんですけどね。
by Inatimy (2010-09-21 04:18)