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モスクから続く散歩道 [フランス・パリ]

 の隙間から、そっとのぞき見る世界。

 怖いものはいないか、何か起こってやしないか、ドキドキ。
 その時、ふと聞こえてくるかすかな声。 
 だいじょうぶ、守られているから。

 あの屋根の遠く向こうも・・・そうだといいな。

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 折り重なるように生える葉っぱから洩れてくる光が、まだまだ弱々しい。

 2月、春が近くまで来てることすら分からなかったこの時期、
 形の異なる緑多き植物は、まるで地球の反対側にでもいるかのような錯覚を引き起こす。

 話は、前記事「教会の丘から続く散歩道」の続き。

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 モスクの前の道を渡ると、そこにはJardin des Plantes 植物園。 

 国立自然史博物館進化大陳列館の横を抜けて真っ直ぐ来ると、バラ園がある。

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 オレンジ色のプチトマトのような実。 2月の園は、ローズヒップがたっぷりあった。

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 その中で、まだ頑張って咲いていたピンクの薔薇も。

 4月に入った今頃はきっと、新しい赤い芽が伸びてるころかな。
 花の咲く頃に、また見に行かないとね。

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 春が来る前の植物園は、まだまだひっそり。 木々の色も、まだ枝の寂しげな色しかなく。

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 そんな中、元気いっぱいだったのが、・・・。
 私の目の高さにあったので、杉のかなり低い部分。

 緑の葉の先に、たっぷりついている茶色いのは、雄花
 この雄花から花粉がこぼれて飛び散る。 鼻がムズムズ。 見なきゃよかった。

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 夏はのトンネルになる道も、まだこんな風で。
 行き交う人たちの服も、暗い冬服色。

 もうずいぶん長く歩いてる。 寒いよね、冷えてきたよね。 

 暖かさを求めてやって来たのが・・・

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 ・・・こちら。 温室。 昨春は、まだ改装工事中だったけど2010年6月に再オープン。

 チケットを買って、中に入ると・・・一瞬にして、もわぁ~っという空気に包まれる。
 ちょっと湿気を含んだ暖かさ。 22℃ほどあるらしい。

 1つ目の温室は、La serre des forêts tropicales humides と呼ばれる。
 熱帯雨林の温室・・・かな。

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 入ってすぐにあったバナナの木。 高さは10mほど。 
 葉っぱは、大きな団扇のような。
 バショウにも似てるな、と思えば、バショウ科バショウ属で仲間のよう。

 高いところを見上げれば、青いバナナがなってる。

 その先に見える? ピンク色のもの。 あれがバナナの花
 正確には、観賞用バナナ。 食用バナナの花は、また違うみたい。 
 でも、初めて見た。

 バナナの木は、フランス語で、Le Bananier と言うそうな。 定冠詞は男性なのね。

 ちなみに、スペインでは、
 スペインのカナリア諸島産バナナは、plátano プラタノ、
 南米産バナナは、banana バナナ・・・     ・・・だと教えられた。

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 温室内には、池も。

 人工的に作られた環境とはいえ、
 日頃、どこを見ても建物に囲まれて暮らす身には、ありがたい。

 都会向きじゃない上に、茶色の指を持つ私には・・・ね(笑)。 

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 Cacaoyer カカオの木 のそばに、カカオの実の解説も。
 中にある種子が、カカオ豆といわれるもので、チョコレートの原料。 

 触っても楽しめて、こういうのは好き。

 カカオ豆生産量の世界一位は、Côte d'Ivoire コートジヴォワール
 昔はフランスの植民地だったこともあり、こちらで毎日ニュースを耳にする。
 カカオ豆をめぐる争いも激化。 国の経済を左右する貴重な産業。

 ちなみに、この国名、スペイン語では、Costa de Marfil コスタ・デ・マルフィル
 また、ドイツでもオランダでも別の言い方があった気がする。
 日本でも、昔は、象牙海岸って言ってたっけ。

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 名前も知らない、見たこともない植物が新鮮で。 

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 やわらかな光に透けた葉脈。  

 『手のひらを太陽に』の歌にも、こんなイメージ。

 Pterospermum acerifolium とプレートに書かれてた。
 日本語では、シロギリというみたい。

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 低い位置に、ころころころ。 イチジクの一種。 

 生を食べるは苦手だけれど、干したのを食べるのは好き。
 最近、イチジクドレッシングというのを買ってみたけど、
 どうも苦手な臭いだった・・・。

 ドライフルーツイチジクは、どうしてあんなにも美味しいんだろう。
 「干す」という作業だけで、旨味が格段にアップするなんて。

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 温室内には、のような洞窟のような3階建くらいの展望台がある。 
 中を階段で上ると、植物の上部を楽々と見渡せる。
 熱帯雨林の温室は、アール・デコ様式で、1937年に建てられたもののよう。

 この温室の一部に、砂漠や乾燥地帯の植物の部屋もあったようなんだけど、
 見逃した・・・。

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 ここは、La serre de l'Histoire des plantes だったかなぁ・・・。 壁が地層風。
 植物の歴史の温室

 さらりと見て歩き抜ける他の人たち。 
 邪魔にならにようにしゃがみ込んだ私の目の先には・・・

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 ・・・地面から生える新しい芽。 プレートにあった名前は、Prêles プレレ。 トクサのよう。

 この節の間隔が、育つにつれて、だんだん大きくなるんだなぁ・・・。

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 葉っぱを、下からのぞいてみたり。

 交互に伸びる枝に、また、交互に生える葉っぱ。

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 ギザギザ緑の葉っぱの裏に、規則正しく並ぶ茶色の粒。 シダ植物胞子

 自然の造形美・・・という言葉が浮かぶ。

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 これは化石の一種。 

 tronc fossile silicifié d'Araucariacée とプレートに。
 ナンヨウスギ科の珪化木(けいかぼく)。

 wikipediaで、珪化木を調べたら、簡単に言うと、
 木が地面に埋まって、圧力受けて、地下水も浸み込んで
 ものすごい年月を経て、二酸化ケイ素という物質に変化したものらしい。
 「石炭になりそこなった木」という表現もあった。。

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 濃い緑。 植物園は好き。 

 動物園も、水族館も、博物館も好き。
 どこも何かに出会える場所。

 年齢によって、その頃の興味によって、その時の気分によって、
 目に映るものが違ってくる。 

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 なんだか恐竜でも出てきそうな雰囲気。 

 遠くに見える「渦巻きくるくる」を撮りたくって頑張る。 
 ついつい美味しそうだと思ってしまうのは、日本人だから?
 かなりの背の高さの植物だけど、その新芽はゼンマイ・・・だよねぇ。

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 撮り終えた後、ぐるりと他のルートを歩くと、あれ、まぁ・・・

 ここに、人の顔ほどありそうな、大きなぐるぐるがすぐ近くに。
 プレートには、Cyathea robusta サイアゼア・ロブスタ とあった。 
 オーストラリアのもののよう。 葉っぱは3~5mの高さに達するとか。

 Cyathea サイアゼア は、日本語ではヘゴ属

 新芽とはいえ、これは硬そうだ・・・。

 

 体もすっかり暖まったので、外に出る。

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 こっちの国立自然史博物館進化大陳列館も、いつか来ないとね。 

 ドミニク・サブロンパン屋さんから続くダンフェール・ロシュローライオンへの道
 リュクサンブール庭園、丘の上のパンテオン教会
 壁の絵ビビンバモスクを抜けて、植物園温室でフィニッシュ。

 長かった散歩も、ようやく終わり。

 でも、まだまだ散歩話は他にもあるの。
また、別の機会に。

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 4月になった今、新芽の姿は、近所でも。 

 冬の間はずっと枯れ木のようだったのに、枝の先からが伸びる。

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 我が家のリビングでは、のトラチが伸びる。

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 の光は、始まりの光。 とどけ、とどけ、と、手を伸ばす。


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コメント 17

Bonheur

杉の木がキョーレツですね。
自分の通ってた田舎の小学校の裏側が一面の杉林だったのですが、未だに花粉症が発症しておらず、そろそろ来るのか?と戦々恐々としております。
私も温室好きです。オーストラリアやNZにある、”まきまき”の植物、大好きです。また観に行きたい・・・と思っていたところでNZ大地震が起きたのでした。。
人生、本当に何が起きるのか分からないので、「後悔のないように生きる」ことは大事、ということをひしひしと感じています。
by Bonheur (2011-04-05 21:24) 

雉虎堂

どれも緑が鮮やかですね(ё_ё;)
地球上には実に多様な生き物が
いることだなあと、改めて感じました(^^ゞ
そして、猫最強!特に陽だまりの腹毛!・:*:・(*´∀`*)ウットリ・:*:・
by 雉虎堂 (2011-04-05 22:14) 

めぎ

冬の乾燥していた日々、温室にでも行きたいね~と話していたんですが、慌ただしくなって、いつのまにか冬が過ぎました。
ドイツ語ではElfenbeinküsteですね・・・ほんと、まるで違いますよね。意味は象牙海岸そのものですけど。オランダ語もそれに似てるのかな。
トラチちゃん、元気そうでよかった♪
by めぎ (2011-04-06 04:05) 

ぷーちゃん

あっ、バナナだ。
いつも記事を楽しんでまっす。
コメント、ありがとうさまでした。
気絶するほど悩ましいの、チャーでした♪
by ぷーちゃん (2011-04-06 08:22) 

ami

沢山の植物を素敵に撮られていますね。

バナナの花!! 花から実までの姿が クジャクのように見えました。
カカオの実物が!! やはり温湿だから育つのですね。
最後に トラチ君お久しぶり!!

by ami (2011-04-06 20:00) 

夢空

私も、陽だまりで、ゴロゴロしたーーーい♪
by 夢空 (2011-04-06 21:16) 

luces

パリの植物園といえばルソーを思い出します。
ライオンが出てくるかな。と思ったらトラチさんが出て来た。
by luces (2011-04-07 00:47) 

まぐろ

散歩道シリーズ楽しみです。
今回は植物園なのですね。
さすがはパリ、規模が違います
(^∇^)
行きたいところがまた増えましたっ
by まぐろ (2011-04-07 01:40) 

母ちゃん

杉の花粉を見ると、花粉症でなくてもムズムズしてきそうです・・・。
by 母ちゃん (2011-04-07 06:34) 

miffy

杉の花を見てたら目が痒くなって鼻がムズムズしてきました^^;
熱帯雨林のムッとした空気懐かしいです。
汗をかきながらのトレッキング楽しかったです。
ぐるぐる巻きのサイアゼア、恐竜が闊歩していた太古の世界に迷い込んだような気になりますね~
日向ぼっこ中のトラチちゃんとっても気持ちよさそう^^
ピンクの肉球プニプニしたいです~
by miffy (2011-04-08 00:00) 

aranjues

ローズヒップって柿のようですね。
家のファニーも昼間は延びっぱなしです。
by aranjues (2011-04-08 15:56) 

tanpopo

冒頭の、温室の緑の葉っぱのドームを下から見上げた写真を拝見して、自分も守られているような気持ちになって、とっても安心しました。温室もいいですね、楽しめますね。Inatimyさんの書かれる文章は、いつも詩的で、どこか別な世界に連れて行ってくれるような気がします。とどけ、とどけ…という最後の締めくくりも素敵でした。
by tanpopo (2011-04-08 18:35) 

ぴーすけ君

温室最近行ってないわぁ~。
生ぬるい暖かさがいいんですよね~w
by ぴーすけ君 (2011-04-08 20:44) 

てんとうむし

カカオのふるさとコートジヴォアールの紛争に心を痛めています。
かの地で収穫されるカカオは最高級だけど、労働者はほんのわずかな賃金で働いているんですよね。。。

我が家の窓辺の熱帯雨林は、節電のためエアコンの電源を切っているので環境の変化に適応するのが難しいようで、胡蝶蘭の花がしおれ、コーヒーの葉も白くなってしまいました。
いろんな意味で暖かい春を待ち焦がれています。
by てんとうむし (2011-04-08 23:27) 

HIROMI

緑がたくさんあると、ほんとにリフレッシュできますね。
写真の中の銅像が、なぜか坂本龍馬に見えてしまった。笑
by HIROMI (2011-04-09 18:09) 

MOCOMOCO

2月でまだ薔薇の葉っぱが残っていたり、お花がついているなんてびっくり!
春にはどんな風になるのか、楽しみな場所ですね~♪
トラチちゃんのぴんと伸ばしたお手手が可愛いなあ^^
by MOCOMOCO (2011-04-09 21:04) 

Inatimy

→皆さま 
『モスクから続く散歩道』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 今日もパリはよい天気。 朝はベランダの植木の水やり忘れないようにしなきゃ。 先日ワイルドストロベリーの種をまきましたが、まだ芽が出る気配なし・・・私、茶色の指だしねぇ。

→Bonheurさま 
私の通ってた学校の裏山も杉だらけで、それで一気に花粉症。 オランダではかなりマシだったのに、パリに来てちょっと症状が逆戻り・・・。 NYの地震も大きかったですね。 クライストチャーチの教会を撮った写真をずっと手元に持ってたので、思わずTVで報道された反崩壊の姿と見比べてしまいました。 

→雉虎堂さま 
我が家の猫、1~2年前は引越しストレスからかお腹の毛を舐め過ぎてハゲてたんですが、ようやくふささに♪ でも今度は、膝小僧がハゲ気味・・・。 でも体重は維持でたぶん5.5キロ以上・・・。

→めぎさま 
コートジボワール、ドイツ語ではElfenbeinküsteですか・・・難しい~。 オランダ語では、Ivoorkust(イフォールクストって音かな)。 まだ英語にちょっと近いかも。 トラチは本当によく寝る子、ねこです・・・。 遊んでくれない・・・。

→ぷーちゃんさま 
やっぱりあのチャーでしたか。 クラッシックからヘヴィメタまで、がんがん音楽聴く家族だったので、子供の頃、いつの間にか脳にインプットされたのでした・・・。

→amiさま 
なかなか自分ではこうは育てられないので、温室や植物園はとっても惹かれますね~。 ベランダではKamoさんの木苺が一番大きくなって、私よりも緑の指なのかも・・・。 あ、トラチは親父みたいな寝姿なんですが、一応、女の子なんですよ・・・。

→夢空さま 
そちらも天気はいいかしら。 日没時間が早いんでしたよねぇ。 こちら、最近夜の8時すぎまで明るいですよ~。 ごろごろし放題。

→lucesさま 
アンリー・ルソーですね~。 こってり濃厚な緑の熱帯風で♪ トラチが居間に来る時はたいて日が陰って、寝床に行くと、おひさまが出てくるという・・・トラチ、曇り女みたいです。

→まぐろさま 
植物園だけで一日中楽しめますよ~。 温室の他にも、高山植物のコーナーもあったはず。 動物園も小さい規模だけどあるし、タダ歩くだけでも気持ちの良い場所です♪ 

→母ちゃんさま 
この杉の雄花は、ホント、むずむずですよねぇ・・・。 我が家の窓ガラスも今は花粉でざらついてます。 もう少しおさまったら、窓ふきしなきゃ・・・。

→miffyさま 
空気が乾燥してるので、温室の蒸しとした生温かさがとても懐かしい感じ。 日本の梅雨時期のような(笑)。 サイアゼアのぐるぐるを見て、山菜うどんや山菜蕎麦が食べたくなったのでした。 トラチを膝の上に乗せて爪切りした後、手をむにゅむにゅマッサージすると、心地いいのかおとなしくしてますよ~。

→aranjuesさま 
ローズヒップは小粒柿とは、面白い発想♪ でも酸っぱいんですよね、ローズヒップ。 子供の頃、ローズヒップ入りの紅茶をもらったんですが、あまりの酸っぱさに腐ってると思い、捨ててしまいました・・・。 ファニーちゃんも春眠で日向ぼっこしてるかな~。

→tanpopoさま 
そう言っていただけると、照れるような嬉しいような。 寒い時期だから楽しめる温室ですね~。 夏になると暑くてなかなか。 枯れたように見えても新芽を出してくれる植物は、私にとって励ましでもあり。 薄暗い冬を抜けた後の春の光は、希望だったり。

→ぴーすけ君さま 
生ぬるい暖かさに加え、乾燥した空気の欧州では、湿気も嬉しい環境。 温室でお肌が潤います♪ 

→てんとうむしさま 
大手のチョコメーカーはカカオ豆の在庫があるから価格上昇はまだ免れる、って読んだけれど、コートジヴォワールで起こっている惨状は大変なことには変わりなく、この先どうなっちゃうのかも心配。 明るいニュースが多くなるといいな。 パリより日本のほうが寒いとは思ってもみなかったな。 春よ、来い。

→HIROMIさま 
銅像、同じ~。 私もぱっと見、おや?坂本竜馬?って思ってたんですよ。 ふふ。 

→MOCOMOCOさま 
寒い寒いと思ってたのは氷点下が延々と続いた12月だけ。 私がオランダの寒さに慣れたからだとばかり思ってたんですが、バラの様子を見ると、年明けからは比較的穏やかな冬のパリだったかも・・・。 他にも目をつけてるバラ園があるので、今から楽しみなんですよ。
by Inatimy (2011-04-11 18:46) 

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