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森の中のローズガーデン [花・植物]

 バラのことを考えていた。

 子供の頃、身近にあったのは、サボテン朝顔ユリサツキ・・・あたり。
 バラは、花屋さんの店先で切り花をちらっと見かける程度の遠い存在。

 なので、小学校の授業で教わった話に出てきた時は、
 ただ、その花の咲く姿がどんなものかよく分からず、ぼんやりとしたイメージのまま。

 野ばら。 それは、どんな花なんだろうな。

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 話は、5月中旬にバガテル公園に行った日の続き。

 アイリスの咲く庭から、なだらかな坂道をのぼって、
 たくさんのバラが咲き乱れる場所、Roseraie ロズレ(バラ園)へ。

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 国語の授業で習ったお話には、いくつか忘れられないものがある。

 この日、頭に浮かんでいたのは、小川未明『野ばら』

 ふたつの国の間にある石碑。 
 その国境を守るために、それぞれの国から派遣されたふたり。 
 老いた兵士と若い兵士。
 快い羽音のみつばち。 そこに咲く野ばら

 ほんの少しこころが痛くなるけれど、好きな話の一つ。

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 日本人が書いたお話なのに、異国の匂いたっぷり。

 陸続きで隣り合う国と国。 首都からは遠く離れた国境を守るふたりの兵士
 花咲く野ばらみつばちという、のどかな雰囲気。

 そこにふたりだけしかいない状況で、毎日顔を合わせ暮らすと、
 ある日突然、ふたつの国の間に緊張が走ったといっても、
 すぐさま敵として相手を見るのは、さすがに難しいことだろう。

 老いた兵士のこころ、若い兵士のこころ、
 互いに思いやる気持ちは、そのまま。 

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 ふわふわのバラ。 いくつかバラを見ていたら、やっぱり名前が気になって。

 ROXANE ★ LAPdal LAPERRIERE  ※ ★印にはレジスターマーク。
 このバラは、ロクサーヌという名。

 LAPERRIERE は、フランスで1864年以来5世代続く、バラの生産・育成のファミリーのよう。

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 JUBILE DU PRINCE DE MONACO ★ MEISPONGE
 Prix du parfum Monza 2000
 ジュビレ・ドゥ・プリンス・ド・モナコ

 つい先日、モナコ公国アルベール2世のご結婚の報道があったばかり。
 写真のバラは、その父レーニエ3世即位50周年記念に捧げられたものみたい。

 フランス語で Jubilé ジュビレ は、「在位50年の祝典」の意味。

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 で、似てそうでまた違う。 

 NOSTALGIETANTAU 1996
 ノスタルジー

 TANTAU とあるのは、Rosen Tantau ローゼン・タンタウ という
 ドイツのバラ育成会社。

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 きっと、あたり一面、すごいバラの匂いなのかも。
 その匂いのまっただ中にいると、よく分からなくなる。

 花びらの渦巻も、面白いものが。

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 杭に張った太いロープにバラがつたう。 綱渡りのバラ。

 ゴージャスでゆるやかな花びら。 ティッシュで作る花のよう。

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 フリルひらひらのような花びらも。 ・・・あ、またアプリコット・ピンク系ばかり目で追ってる・・・。

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 陽がかげっても、美しいな。

 バラといえば、思いだすもある。

 Seal"Kiss From a Rose"
     ( ↑ 曲のタイトルクリックすると、YouTube で聴けます。)
 映画『バットマン・フォーエヴァー』で使われていたそうなんだけれど、
 その映画は見てない・・・。

 頭の中でリフレインされるのが、♪ ベイベーぇ ♪ のサビの部分ではなく、
 ♪ ・・・Now that your rose is in bloom. ・・・♪
 ♪ ・・・なうざっちょー、ろーずぃーじぃんぶるー・・・♪ 。  なうざっちょー がなんとなく好き。

 こんなふうに、あいかわらず、ひらがなにしか聞こえず、歌詞は調べてようやく、なるほど~・・・となる。

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 杭に沿って、縦に並んでる姿も。 

 何年もかけて、ロープを渡ってどんどん広がっていくんだろうな。
 何も変わらないようでも、日々変化してるんだ。

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 少し離れて見ると、このエリアは、こんな感じの演出。  あぁ、3Dで見えるといいのに。

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 木製の園芸棚にもバラ

 細い坂道が見えたので、さらに上がってみると・・・

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 ・・・小高い場所にガゼボ(西洋風東屋)があって、全体を見渡せるようになってた。

 左部分から。 さっき、と太いロープ三角錐の木のあったところ。

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 中央。 アイリスの庭から上がって来たのは、中央の奥のあたり。 

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 右側。 背の低いのも、背の高いのも、すべてバラ。
 ちらっと見える建物は、温室だったかな。

 と、こんな感じで、広いローズガーデン
 5月中旬、まだまだツボミもたくさんあった。

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 LAVENDER DREAM ★ INTERlav 1985 INTERPLANT
 ラベンダー・ドリーム

 Interplant Roses は、オランダのバラの育成会社のよう。

 私がイメージしてた野ばらは、形としては、こんなふう。
 でも、色は違う。 ピンクじゃなくって。 それも温かみのある白

 ・・・と、いつの間にか、あちこち、野ばらのイメージを見つけに歩き回った。

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 近いけど、もっともっとわんさかと生い茂ってて、花が小さく見えるほどで・・・と、
 ワイルドな感じを、ローズガーデンで探し求めるのは到底無理な話なんだけど。

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 ふと記憶によみがえる、アトリエ

 少し前の『花に囲まれ』で話した、見た目も趣味もまったく違う、中学から今も続く友達。
 何度か、絵のモデルとして彼女の前に座ったこともあった。 

 じっと椅子に腰かけながら、ぼんやりと見つめる明るい窓。
 白いシャツは、シワや質感が難しいらしい。
 時折交わす言葉。 ふと話した『野ばら』のこと。

 「あるよ、うちに。」

 彼女は、小川未明童話全集を持っていた。 しかもすごく古い。
 思わぬところで手にし、借りて読んだ。 
 その中にあった『赤いろうそくと人魚』も忘れられない話。 こっちのほうが「野ばら」より有名なのかな。

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 のちに、全集じゃないけれど、
 文庫本があることを知り、『小川未明童話集』を買った。 新潮社だったかな。

 自由に隣国へ移動できる今、欧州国境を感じることは少なくなったけれど、
 ここでは私が外国人であることは変わりなく、言葉の壁も分厚く高く。

 国境に派遣された年老いた兵士若い兵士は、
 言葉の問題はなかったんだろうか・・・なんて、思いを巡らせてみたり。

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 伝えたい理解したい、という気持ちがあれば意志疎通は可能だけれど、
 実際は、その先、そこから前進するのが難しくって。
 地道に努力あるのみ、かなぁ・・・と、これも、何度も何度も繰り返し思う(笑)。

 小高い所に見えてるのが、さっき上から全体を見渡していたガゼボ

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 HOT CHOCOLATE ★ SIMcho 1986 SIMPSON
 ホットチョコレート

 作ったのは、どうもニュージランドJ.W.Simpson という人のよう。

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 Paul Noël  H.Wich 1912 Tanne
 ポール・ノエル

 作出は、Rémi Tanné で、フランス。
 H.Wich は、Hybrid wichuraiana ハイブリッド・ウィクライアナという、
 私にとっては、また新しい用語に突き当たった・・・。
 なんだろうなぁ。

 来年で、100年を迎える品種かぁ。
 花の開きが進むにつれ、ダリアっぽい。

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 歩いていたら、金のプレートに出会った。  2007年に賞をとったバラのよう。

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 ROSA CENTIFOLIA  ロサセンティフォリア としか、
 ネームプレートにはなかったけれど。

 ローズ・オイルなどにもよく利用されるバラなのだとか。
 小さなツボミが、あんなに大きく咲き開くなんてね。

 でも・・・

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 REPUBLIQUE DE GENEVE ★ LAPej LAPERRIERE
 レピュブリク・ド・ジュネーヴ

 この日、一番のお気に入りは、これだった。

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 そろそろ、帰ろうかな。 

 バラの名前のプレートが、古くて文字が読めないものがあったり、
 書き方のパターンが統一されてないので、
 もっと分かりやすいプレートだといいのにな。

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 陽だまりで、猫がお昼寝。

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 エントランス付近にあった木には、黄色い柑橘の実。

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 ミュージカルの案内ポスター。 
 その時期だったら、公園に入るのに入園料が必要だったかな。

 ♪ わらべは見たり、野なかの薔薇・・・ ♪

 帰り道、頭の片隅に流れたのは、
 矢野顕子“Röslein auf der Heiden(野ばら)”
          ( ↑ 曲名クリックすると、Youtube で聴けます。)
 ちょっとけだるそうな、それでいて楽しげな。

 バガテルでの休日、いい日だったな。

 てくてくと、またメトロの駅まで3km歩いた。
 目をつぶると、バラの花

どんなバラが好み?
 バラで思い出す音楽物語、ある?


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luces

小川未明の『野ばら』はなんとなく覚えている程度の遠い記憶が。
いま、読み返してみました。ネットは便利ですね。
暖かくて、悲しいお話ですね。
カチッと整備された庭園がとても美しいです。
by luces (2011-07-05 19:58) 

めぎ

↑私もうろ覚えだったので今ネットで読みました。
時々考えますよ、もし私の国と夫の国が戦争になったらどうなるのかなあって。どうしようかなあって。
バラと言えばゲーテの野バラの詩を暗唱した記憶が蘇ります。シューベルトのオーソドックスなメロディーと。そして、その元となったゲーテのエピソードと。
by めぎ (2011-07-05 21:14) 

MOCOMOCO

小学生の頃に小川未明全集を読んだ記憶があります。
「赤いろうそくと人魚」の方は覚えてたけど「野ばら」は忘れていました。
大人になってから再読しても味わい深いお話ですね^^
バガテル公園のロズレ、想像以上に素敵です♪
3Dで見たいな~^^
三角錐にきっちり刈り込まれた木や、整形式の庭園がまさにフランス風!
でもバラの産地はフランスだけではなくていろんな国のものが植えられているんですね。ああ、ますます見に行きたい~♪
by MOCOMOCO (2011-07-05 22:14) 

母ちゃん

縦並びの薔薇、面白いですね~♪ 他の薔薇も青空と几帳面な庭園に映えて、美しいです。こんなパリの楽しみ方もあるんですね(^^)
by 母ちゃん (2011-07-05 23:53) 

匁

ばらバラ薔薇 いっぱいですね。
薔薇好きです。絵を描くのにピッタリです。
by (2011-07-06 07:37) 

ぷーちゃん

いやぁ、きれいな
薔薇がいっぱい。
by ぷーちゃん (2011-07-06 19:49) 

TaekoLovesParis

すばらしいバラ園ですね!お庭の造り方が日本のバラ園より、
ずっと規模が大きいし、空間を多くとってますね。三角錐の木も
フランス庭園の演出。
上から3番目の写真と、杭に沿って縦に花が並んでる写真、
とってもすてきですね。
by TaekoLovesParis (2011-07-06 22:30) 

HIROMI

「野ばら」は戦争物のお話でしたね。わたしも6年生の時習いました。
その野ばらはゴージャスなイメージはないです。そっと咲いている、みたいな感じかなあ…
by HIROMI (2011-07-07 00:25) 

hatsu

バラを見ると胸がときめきますね^^
太陽とバラの匂いが、こちらまで伝わってくるようです♪
『野ばら』、読んでみたくなりました。
今度本屋さんで探してみまーす。
by hatsu (2011-07-07 06:16) 

miffy

小川未明の本、家にあったので「野ばら」も「赤いろうそくと人魚」も読んだことあります。
フランス式の庭園はそばで見るよりも俯瞰で見たほうが素晴らしさがよくわかりますね〜
私もInatimyさんが好きな薔薇が一番好きです。
ポール・ノエルも良いなぁ〜
お昼寝してる猫ちゃん暑くないのかしら^^
by miffy (2011-07-07 21:55) 

てんとうむし

バラがたくさん♡
残念ながら小川未明の『野バラ』は知らなかったけれど、日本の野バラはわかるよ^^
白い一重で、たぶんInatimyさんのイメージ通りだと思う♪
園芸種とちがって、そのへんの公園で藪のように無造作に植わっていたり、自生していることが多いので、うちからそう遠くない場所にもあるんだけど・・・春にしか咲かないから、来年の春撮ってくるね。
フランスだと野生のバラは、たぶんローズオイルをつくる品種という金賞のバラが、ダマスクローズの系列だから、そんな感じだと思います^^
園芸種は葉っぱの数が3~5枚葉のことが多くて、原種に近いものは7~9枚だから、そんなことも手掛かりになります。
お気に入りのバラ、たくさん見つけてね♡
by てんとうむし (2011-07-07 23:10) 

ネム

新潮社の小川未明童話集は私の宝本です。
読んで読んで読んで…ボロボロになってしまってるのを見た友人が
新しいのを買ってくれたこともあります(^^;
素敵な休日、見てるだけも幸せな気分になりました♪
by ネム (2011-07-08 02:57) 

Inatimy

→皆さま 
『森の中のローズガーデン』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 7月に入って、そろそろ街の中、バカンスに出かけてお休みのお店がちらほら。 パン屋さんも1カ月休むところもあるので、いつもと違うパン屋さんに通ったり。 いざとなったら自分で焼く・・・なんて、私にとっては夢か幻。

→lucesさま 
ネットで検索できるのって、ホント便利ですよね。 『野ばら』は静かな流れの話なのに、伝える力はパワフル。 悲しいけど、今も、どこかで起こってることなんですよね。 バラの庭、また行ってみようかな、秋に♪

→めぎさま 
ドイツで、ある夜、戦争が起こったと思って飛び起きたことがあります。 止む間もなく連続して落ちる雷にまぶしい稲光。 一瞬、どこに逃げようかと。 ドイツの詩で好きなのは、カール・ブッセの詩で上田敏の訳の「山のあなた」。 Über den Bergen・・・原文を十分味わえるほどの語学力がほしいなぁ・・・とつくづく思います・・・。

→MOCOMOCOさま 
小川未明全集、身近にあったなんてうらやましいです。 買った文庫本も日本に置いてきたので、ちょっと後悔・・・。 バガテル公園のロズレ、動画も撮ったんですが、あまり上手じゃなくって(笑)。 秋にも行ってみようかな、と思うほど、キレイな園でした♪ きっとMOCOMOCOさんも激写してるかも♪

→母ちゃんさま 
観光ポイントをめぐるのもパリの魅力を味わう一つですが、ちょっと花を楽しんだり、庭を見たりもいものかも。 そこでパリの人たちにまじって過ごすのも、暮らすようにパリを楽しめるかな♪

→匁さま 
薔薇、描かれてましたよね♪ 花の形や花びらの様子、じっくり見れば見るほど、私には描くの難しそうです・・・。

→ぷーちゃんさま 
ふふ、これが、バガテル公園の見どころのバラ園ですよ~。 今はどんなふうになってるかしら。

→TaekoLovesParisさま 
私も規模の大きさに仰天しました。 すごく間隔開けて、この先もどんどん伸びて行っても、育っても平気なくらい。 フランス庭園、きっちり作ってあって、イングリッシュガーデンとは、また違った面白さがありますね~。 新しいカメラで激写でした♪

→HIROMIさま 
「野ばら」今でも、国語の教科書に載ってるのかしら。 たくさんの人に読んでもらいたい作品ですね~。 

→hatsuさま 
『野ばら』のお話、いいでしょ♪ 新潮社さんから小川未明童話集という文庫本が出てます♪ いいお話、他にもいろいろなので、ぜひ。

→miffyさま 
咲いてるバラ全部撮りたくなるほど、素敵なバラ園で、フランス庭園のよさを実感♪ また秋になったら、来ようかな。 この日は、20℃くらいだったので、お昼寝猫ちゃんもぽかぽか陽気で心地よいくらいかも。 最近、太陽の位置が高くて家の中まで陽が入ってこず、トラチが、「どうして~?」って鳴いてます(笑)。

→てんとうむしさま 
そうか、野バラは春しか咲かないんだ。 秋にも咲くのは園芸種なのね。 さすがバラにくわしなぁ。 日本の野バラ、いつか見せてね。 フランスの野バラも、どこかで咲いてるかな・・・。 あのバラの村にありそうかな~。

→ネムさま 
すっごい、ボロボロになるまで読んだとは、小川未明さん本人が聞いたら、すっごく喜ぶかも。 その文庫本も含め、日本語の本をほとんどすべて置いてきたので、たま~に記憶をたどって思い出しては、何度も何度も頭の中で繰り返して、じんわり楽しんでます♪
by Inatimy (2011-07-13 06:21) 

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