森のお城で見たもの [フランス・パリ]
そびえたつ岩山。 そこは、口から火を吐くドラゴンの棲みか。
さらわれたお姫さまが閉じ込められているのは、一番高い岩の塔。
助けにやってきたのは、剣を持った王子さま。
ドラゴンをやっつけて、お姫さまを無事救出。
馬に乗ってお城に帰り、ふたりは皆の祝福を受け、幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし・・・は、ファンタジーの世界。
私の場合、姫というと、宮崎駿の世界を思い出す。
『風の谷のナウシカ』の姫さま、ナウシカ。
『もののけ姫』の山犬に育てられたサン。
・・・あ、どちらも、他の人を助ける側の強いお姫さまだ。
話は、6月の初め。
やって来たのは、パリの東に位置するBois de Vincennes ヴァンセンヌの森。
そこにお城がある。
その名も、château de Vincennes ヴァンセンヌ城。 そのまま。
今いるのは、北側にある村の塔の門。
3つの門と6つの塔のある壁にに囲まれた要塞王宮。
図によると、お堀に架かる橋を渡り、真っ直ぐ行くと、右に、ヴァンセンヌ城。 左にシャペル。
さらに奥には、向かい合うように建つ館と南の森の塔の門。
これが、お堀にかかる橋。 訪問者は、中央からでなく、左の細い橋から。
どちらも跳ね橋になってる。
突き出た木の棒が、跳ね上げた時に上手く収納されるように、壁面に溝もある。
ちょっぴり猫目線。 入ってまっすぐ石畳を歩くと、シャペルらしき建物が見えてきた。
この場所の始まりは、12世紀。 ヴァンセンヌの森に狩猟のための館ができたことから。
これは、Sainte-Chapelle de Vincennes ヴァンセンヌのサント・シャペル。
フランボワイヤン・ゴシック様式。
(14世紀から16世紀初めに流行した後期ゴシック建築様式。)
もらった解説パンフには、
1379年にシャルル5世がパリのシテ島にあるサント・シャペルをモデルに造らせたもの、と。
パリのサント・シャペルなら、行ったことがある。
(その時のお話は、こちら「光と色のかけらの中で」)
窓が大きい。 ステンドグラスがキレイかも。 でも、その前に、まずは・・・
・・・その向かいにあるお城の主塔から見学。
主塔には広間があり、四隅に4つの小塔を備えた形。 。
ジャン2世善良王が作らせ、完成したのは息子のシャルル5世の時代、1370年ごろ。
写真中央の、2つの四角錐の屋根のところから橋を渡ってお堀を越え、
ふたつの塔に挟まれた玄関門である小城塞から入るよう。
歩いてきた道を振り返る。 写真右端に、最入ってきた村の塔の門。
お城やシャペルの見学の入場券を売ってるのは、一番右にある建物。
ショップもあり、ちょっと面白い。
ここもまた、白く細かい砂なので、靴は真っ白になるし、
風が吹けば、白い砂埃が舞う・・・。
主塔に向かう。 ここにもお堀。 昔は水で満たされていたそうな。
渡りきったところには、小城塞。
そこから両側に伸びる城壁に、主塔はぐるりと囲まれている。
小城塞(左)と主塔(右)との間に、歩道橋が。 上の階でつながってる。 これは面白い。
小城塞の2階(日本でいう3階)に、シャルル5世の執務室が。
その歩道橋の下あたりから見た城壁内側。 この城壁は、中を歩ける。
内部は、こんな感じ。 中世の時代には、上部を覆う屋根はついてなかったんだそう。
一周できるかと思ったら、修復工事中なのか、見られたのは一部だけ。
写真右側が、中庭。
見下ろすと、中庭は、こんな風。
小城塞の一番上にあがってきた。 階段の上の部分に鐘がある。
この鐘塔は2000年に修復されたもので、鐘も複製。
オリジナルは、向かいのサント・シャペルに保管されてるそう。
主塔の上にはフランスの国旗。
入ってくるために渡って来た橋と、お堀。 奥に、サント・シャペル。
それと左の建物(武器の館)の間にあるのが、礼砲の塔の門。
結構な高さ・・・。 人がアリみたい。
見晴らしがとてもいい。
左を向くと、最初に架け橋を越え敷地に入ってきた村の塔の門に、
入場券を買った建物群。
右側には、サント・シャペル、古典様式の館(王妃の館)、南側の森の塔の門。
その門とアーチと建物に囲まれた広場では、
6月に、野外オペラ『Madame Butterfly(蝶々夫人)』が上演された。
小城塞のテラスから主塔を見る時は、窓の飾り彫刻もお見逃しなく。
(現在ついてるのはレプリカだそう。)
音楽を奏でる天使、空想上の生き物、預言者が10個ほど。
写真の左から3つ目は、ウロコがついてて人魚みたいな感じだった。
いよいよ小城塞から、途中の歩道橋を渡って主塔に。
広間には、中央に柱が一本。 ヴォールトの天井だった。
その柱の頭から咲き開くようにリブが広がり、壁へ。
先には、人や動物の彫像の装飾。
曲面には、細長く切った板のようなものが張ってある。
これって、板羽目っていうのか・・・ふむふむ、と解説パンフに目を落とす。
ここは会議室だったよう。
その上の階でも同様に中央に1本の柱。 でもほんのり色付き。 当時の面影が残る。
このホールは、寝室として使われてたそう。 大きな暖炉が残ってた。
主塔は、16世紀以後、牢屋として使われていて、
ホールの四隅の塔の部屋には、囚人が描いた壁画もあった。
補強の格子の入った、ステンドグラス調の分厚いガラス窓。 波打ってる。 これが好き。
部屋の中にも、動物や人の装飾。 羽のついた牛が可愛い。
こんな錠も頑丈そうで、魅力的。
地上階には、牢屋として使われてた時代の資料が並んでた。
この主塔は、高貴な生まれの囚人用の牢屋だったよう。
14人が定員だったとか。
小城塞から出て橋を渡り・・・
・・・向かいのSainte-Chapelle de Vincennes ヴァンセンヌのサント・シャペルへ。
先ほど書いたように、作らせたのはシャルル5世だけれど、1380年に亡くなったので、
シャルル6世(1368-1422)が後を続ける。
この正面のファサードが完成したのは1480年頃のルイ11世(1423-1483)の時代。
内装においては、アンリ2世(1519-1559)の元で。
それも1793年フランス革命のさなかに破壊されてしまう・・・。
ファサードに、首の長いガーゴイルを発見。 可愛い。
床に落ちる陽の光に。
壁際からの視線。
シテ島にあるサント・シャペルより、はるかに明るく、こざっぱり。
両側にある大きなステンドグラスから光がいっぱい。
それらは、わりと新しいもの。
1999年12月26日の嵐で、風速200km/h の風がサント・シャペルを襲い、
身廊のステンドグラスが壊れてしまったのだとか。
写真右端奥に見えるのが、小城塞の鐘楼の鐘のオリジナルのよう。
天井の装飾画。 アルファベットが潜んでる。
3人の天使が支えるフランスの紋章。
王冠の下には、fleur de lys フルール・ド・リスの盾。
フルール・ド・リスは、ユリではなく、ユリ目のアイリスの花がもとなんだそう。
盾に、いっぱい散らしてあるのが、1376年以前のデザインらしい。
それ以降は、フルール・ド・リスが3つ。 主塔の主、シャルル5世が変更した。
バラ窓、爽やかなブルー。
雲の上に。 光を背負って。
チラッと覗いた小部屋には、数人の像が。 中の一人は、もみあげ、ふさふさ。
左側にあったので、たぶん、王の礼拝所。
右が王妃の礼拝所・・・と解説パンフに。
シテ島のサント・シャペルは、2層構造だったけど、ここは、地上階のみ。
森の塔の門。 森側の城壁はアーチ型に抜かれ、解放感。
写ってないけど、左右に古典様式の館(王の館と王妃の館)が向かい合って建っている。
その館は、マザランおよびルイ14世の要望で1654年に着手・・・と解説パンフにあった。
王の館と、王妃の館。
同じ敷地内とはいえ、住む館がそれぞれだなんて、なんだか別居状態ねぇ。
・・・と、思ったら、ルイ14世(1638-1715)は、
王妃とあまり仲がよくなく、たくさんの公妾や愛人がいたそうな。
太陽の光がまぶしい。
偶然、読み始めた本 "Le Ballet de L'Opera de Paris" の中に、
そのルイ14世の姿があった。
ルイ14世は『ペレウスとテティスの結婚』という宮廷バレエの中で
アポロ(太陽)の役をしたことから、Roi-Soleil 太陽王と呼ばれたそうな。
(掲載されてた絵、アポロの衣装を身にまとった姿が、なかなか可愛い。)
ルイ14世の舞踏への愛は、王立舞踏アカデミーを創立し、
その少し後に、王立音楽アカデミーも設立。
この王立音楽アカデミーが、のち、バレエ・オペラ団体 パリ国立オペラとして、
名を知られるようになる。
・・・と、辞書片手に読み始めて、まだ15行くらいなんだけどね・・・。
左に見えてるのが、王の館。 それから、奥に主塔、右にサント・シャペル。
王の館や王妃の館は、中には入れないのが残念。
ここにカフェやレストランがあれば賑わうのに、と思うのは日本人的発想なのかなぁ・・・。
フランスというと、ヴェルサイユ宮殿などの華やかな装飾ばかり頭にあったけど、
こんなにシンプルな城塞のお城っていうのもまた魅力的。
パリにお越しの際は、是非、このヴァンセンヌ城へもお立ち寄りを。
たっぷり堪能したので、森の塔を抜けて、いよいよヴァンセンヌの森へ。
次回へ続く。
館の前の広場、何もない芝生に見えるけど、花が咲いてるの。
最初の写真のように。
パリのお城、素敵ですね。
細部にもいろいろ手が加えられ、装飾が素晴らしいです。
広いので、時間をかけてゆっくり見て廻りたいお城ですね。
ヨーロッパのお城は、日本では味わえない
憧れのような気持ちにさせる建物ですよね。
by アールグレイ (2011-07-23 02:43)
ベルサイユは超有名で人が多すぎるから、次に行くならこんなシンプルなお城もいいですね~^^
牢屋として使われてたこともあるなんて・・・しかも高貴な囚人用って!
高貴な生まれの人は囚人になっても特別扱いだったんですね~。
サント・シャペル、真っ白な壁にブルーのステンドグラスがとっても綺麗です♪
by MOCOMOCO (2011-07-23 11:20)
大きなお城ですね~。見て回るだけで大変そうです。確かにここにカフェでもあると、のんびり過ごせそうですよね♪
by 母ちゃん (2011-07-23 11:24)
このお城も白い石で造られてますね。
同じくらい古い城でも、ドイツのは石の種類が違うので、ずいぶん違った印象になるなあと感じました。
by めぎ (2011-07-23 16:38)
まさに、ファンタジーの世界のお城ですね。
こういったところをモデルにしてゲームなんかを作っているのかな。
でも、竜よりも騎士が似合うな♪
by HIROMI (2011-07-23 22:40)
真っ白できれいなお城ですね。
彫刻やステンドグラスがとても魅力的です。
by luces (2011-07-24 14:17)
お姫様といえば・・・・『スターウォーズ』のレイア姫とか、『アラジン』のジャスミンが浮かんでくる私。
勝気で王子様も助けられちゃうようなお姫様が好き(笑)
お城って優美だけど、ひとかわむけば謀略に彩られた歴史だったりして、ちょっと怖いな~。
by てんとうむし (2011-07-24 21:43)
装飾がいっぱいあるのに(しかもちょっとくどい顔とか)全体的にはスッキリと優美で綺麗なお城ですね。
曲線の使い方が緩やかだから…かなあ。
ステンドグラスの光、とっても綺麗です~^^
by ネム (2011-07-25 13:36)
こんにちは。
ヴァンセンヌの森、ブローニュの森、行ってみたいけど観光客には
時間的に難しいところなので、沢山の写真を見られて楽しかったです!
それにしても素晴らしいお天気ですね。
青空と白い壁の対比が美しい〜。
by Bianca (2011-07-26 12:17)
→皆さま
『森のお城で見たもの』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 ちょうどこの記事をアップして頃にも、このお城に行ったんですが雨・・・。 20℃もない寒い寒い夏の日でした・・・。
→アールグレイさま
お城を築くこと、お堀もつくるとこ、それ自体は日本も欧州も共通してるのに、出来上がったものはとても異なっててその違いがまた魅力的♪
→MOCOMOCOさま
ベルサイユはお城でも宮殿だから華やかで人気ですものね♪ 私、まだ行ったことないんですよ・・・。 牢屋で何か作品を描いた作家さんもいたとか。 囚人用の窓っていうのもありましたが、上のほうについてて私には外が見えなかったです・・・。 この近くに、MOCOMOCOさんが好きそうな場所もあるんですよ。 またいつか紹介しますね~。
→母ちゃんさま
ずーっと長い期間をかけて修復されて公開されたお城なのでキレイなお城でした。 このお城の外の街には、カフェがずらりと並んでます♪ なかなか我が家は入れないんですが・・・へへ。
→めぎさま
白い石で造られたお城に、足元には白く細かい砂・・・晴れた日はまぶしいです。 オランダは山がなかったので、道路工事に使うのも海の砂ばかり。 その違いも私には新鮮♪
→HIROMIさま
ショップには子供たちが好きそうな騎士のフィギュアも、お姫様がもちそうなグッズもありました~。 私がひかれたのは、中世のお料理って本ですけど・・・読めない。
→lucesさま
修復にもかなりの年月がかかったようです。 彫刻は中世の館のアーチのほうにもいろいろあって、雰囲気ヨカッタです♪ これから、ますます観光客も増えるかな。
→てんとうむしさま
ドイツのお城を見た時は、拷問部屋っていうのもあって、そこはなんだか怖かった。 でヴァンセンヌ城では見られなかったけれど、お城のキッチンとか、トイレとか、そういうのも楽しいよね。
→ネムさま
装飾、ふふ、確かにいっぱい。 彫刻像の顔もホリが深いし。 ということは、逆に日本のお城を見学しに来た外国の方々って、あら、なんてさっぱり、って思ってるのかも(笑)。でも、金箔使った豪華絢爛な襖とか意外な感じかな。
→Biancaさま
ヴァンセンヌの森、ブローニュの森も、行ってみると案外近いんですよ。 実際、ヴァンセンヌ城にはドイツ語圏や英語圏の観光客もたくさんいらっしゃいました♪ いつか是非。
by Inatimy (2011-07-26 18:47)
私好みの天井や装飾がいっぱいあって画面に釘付けになりました。
ヴァンセンヌのお城は外から(それも遠くから)見ただけだったので中を見ることが出来て嬉しいです〜
城壁いつかは1周できるようになるのかしら・・・
上から見た景色も素敵ですね。
by miffy (2011-07-28 15:50)
→miffy さま
大規模修復で順に公開されてきているようなので、そのうちにもっともっと見られる部分が増えるのかも。 2014年の動物園の再オープンも含め、楽しみ♪
by Inatimy (2011-07-29 23:01)
日本人的にはお城に住みたいと思いつつも、
なにか用をたすのにずいぶん歩くな~とか、いらん心配しちゃいました(笑)。
空が高いのね。
by yuka (2011-07-30 16:45)
→yukaさま
ここのお城は、まだ小規模かな。
でも大きなお城だったら、掃除が大変だとか、暖房費がかかりそうだとか、
ついつい庶民的な心配をしてしまいますね~。
夜中にのど乾いたら、キッチンまで遠そうだ・・・もあるな。 ふふ。
by Inatimy (2011-08-03 06:02)
お姫様を考えるとき、必ずシンデレラだなぁ。
でもね、実際にお姫様がいるとするならば、自分はお姫様ではなくて
その周りにいる人であることに気づくのです。
自分がお姫様でいることがありえない。。。なりたいとも思わない。
それって自由が奪われる気がするからなんですよね。
あ、それって女子的には不幸なのかしら。。。あはは。
by カエル (2011-08-05 15:16)
→カエルさま
シンデレラか、なるほど。 私は子供の頃からドレスやフリルっていう柄でもなかったので(母は着せたかったようだけれど・・・)思いつかなかったなぁ・・・。 でも、いぢわるな継母や姉妹から解放されて、シンデレラの暮らす環境は少し改善されたかもね。 その後、どんな風に展開したんだろう。 シンデレラも自由を満喫できてたらいいなぁ・・・。
by Inatimy (2011-08-09 16:39)