変わらないもの、変わるもの [フランス・パリ]
帰るたびに違う街の姿。
いつもの駅で下車したはずなのに、新しくなった駅構内で迷い、
待ち合わせ場所で使ってた本屋さんが別の店になり、
地下鉄が延長されて、路線も増えて。
だんだんと知らない街になっていく。
今、この瞬間も。
でも、本当は、変わってないもののほうが多いはず。
大聖堂の中で、絵本にでも出てきそうなキレイな壁の絵を見たのは、9月の初めのこと。
珍しく、気温も31℃まで上がって天気も良い日。
その日、まだまだ観光客が多いパリの街なのに、
Kamoさんに、行こう、行こう、と誘われ続け、訪れたのがシテ島。
あまりにも細やかな模様のステンドグラスで、全体を写すと詳細がよく分からない・・・。
たくさんの団体観光客もいるので、邪魔にならないように、さっと撮る。
本当は、これよりもかなり薄暗い。
こんな内部だったっけなぁ・・・と、昔に行った時のことを思い出しながら側廊を歩く。
この日行った場所は、こんな形の建築物。 パリのノートルダム大聖堂。
Kamoさんのお勧めの塔は、この模型で言うと左部分に位置する。
10時頃に大聖堂についた時点で、すでに北側の通りには、塔に上りたい人々の行列・・・。
・・・だから、夏が終わって秋になって落ち着いてからね、って言ったのに。
しかも修復中か何かで一部見られないところもあるって。
だから、塔はあきらめて、大聖堂の内部見学に。
キャンドルの立った昔の照明や、聖書のお話の木彫りなど。
翼廊からクロッシング部分の天井を見上げたところ。 バラ窓も細やかなステンドグラスだった。
捧げられたキャンドルの灯。
ノートルダム大聖堂は、パリ観光の見どころの一つだけれど、
今でも大切な祈りの場でもあるので、静かにそっと見学。
正面の門のあたりから、中をのぞいたところ。 背の高い天井。
この空間を作り上げるために、外側の壁にフライング・バットレス(飛梁)がある。
門の扉のぐるぐる装飾もいい感じ。
外壁の彫像もスゴイから、見て行こう。 中だけ見学は、もったいない。
キリスト教について詳しくなくても、興味をそそられるものがいろいろ。
実際、私も気になるところを撮ってから、あとで調べて、そうだったのか~と知るタイプ。
出てきたのは、大聖堂の左の門。 聖母マリアの像が立つ。
門の上のティンパヌムには、永遠の眠りについた聖母マリアを迎えに来るキリスト、
昇天された聖母マリアの戴冠の様子が表現されてるそうな。
パリのノートルダム大聖堂には、3つのポルタイユ(正面入り口の門)がある。
この聖母マリアの門の他に、最後の審判、聖アンナ(聖母マリアの母)。
聖母マリアの像の足元には、アダムとイヴ。 イヴが禁断の実をかじってる・・・。
ふたりの間には、羽のついた女性の姿。 でもよく見ると、その先は、木に絡みつく蛇の体。
教会では、よくこのシーンを見かける。
同じシテ島にあるサント・シャペルにもあったけど、微妙な違いがまた面白い。
(その写真があるのは、こちら「光と色のかけらの中で」)
左横には・・・
なんだか不思議な動物も。 鳥のような恐竜のような。 ドラゴンの一種?
その右には、魚もいる。 他にも海老がいたりね。
上の列で、自分の首を持ってるのは、聖ドニ。
首を切られて殉教した司教で、フランスの守護聖人。
中央の入口の前に来て見上げる。 水平のラインが・・・あ、平行じゃない。 ずれてる・・・。
真っ直ぐなようでも、左の塔の方が少し手前にはみ出てる?
中央にちらりと見える、諸王の階。 並んだユダヤとイスラエルの王さまたちの顔。
その下にある門は・・・
・・・最後の審判。 1210年と刻まれてるらしいので、かなり古い。
800年くらい前の人たちが彫ったものが目の前に。
一番上には、キリスト。 一番下には、よみがえる死者たち。
中段にいる大天使ミカエルの手には天秤。 悪魔とともに、死者の魂を量っているそうな。
その結果、左側、天国に行く者と、右側、地獄に行く者に分けられる。
右部分の悪魔に地獄へ連れて行かれる人たち。
悪魔の尻尾にふさふさの毛。 尖がった矢印のような先のイメージがあったので意外。
アーキボルト(ティンパヌムの縁取り)には、壁を抜けようとしてるような天使さまや、
逆さ吊りになってる人も・・・。 その下写ってないけど、釜ゆでにされてる。
その右側には・・・
・・・聖人たちの頭上に、いろんな悪魔の姿。
最後に、大聖堂の正面右にまわり、入り口になってる聖アンナのポルタイユを見て・・・
・・・門の右サイドで、聖パウロの足の下にいる人が気になったり。 踏まれちゃってる・・・。
こんな風に、怪しい生き物見つけたり、妙な姿を見るのも、私の楽しみのひとつ。
その後は、シテ島にある花市に寄ってから、
Pont Saint-Michel サン・ミシェル橋 を南へ渡り、
何度も後ろを振り返りながら、川沿いの道を歩く。
ちらっとよそ見して、オシャレな店構えに、なんのお店だろうね、なんて言いながら。
どうもレストランのよう。 Laperouse ラペルーズ って名前の。
そろそろかな、と川の近くまで下りて行って・・・
Pont Neuf ポン・ヌフの橋の向こうに、アンリ4世の騎馬像を見たりして。
ここに来たのは・・・
・・・同じ場所に立って、この風景を確かめるため。
これは、オランダの画家、
Johan Barthold Jongkind ヨハン・バルトルト・ヨンキント(1819-1891) の絵。
"La Saine et Notre-Dame de Paris" 1864
『セーヌ川とパリのノートルダム大聖堂』。
147年後の現在の様子は・・・
・・・こんな感じ。 この角度、絵に近い?
かなり建物や木々が増えた。 ノートルダム大聖堂が半分しか見えない。
川辺の歩道の幅も狭くなってるなぁ。
船も観光船だし。
この後、サン・ミシェル広場から横路を入って、うろうろ。 帰宅したのは、4時間後・・・。
でも、デパートの食品館を見たり、FnacでCDやDVDや本を見たりだったので、写真はなし。
壁に描かれた木の影。 まるで本物みたい。
この壁、100年後には、どうなってるんだろうなぁ・・・。
皆さんの住む街も変化してるのかな。
観光スポットや美味しいお店ができたりとか。
装飾が本当に見事ですね。素晴らしい!目の保養です。
by HIROMI (2011-10-21 23:36)
豪華ですねえ・・・パリは100年後もやっぱりゴージャスなんでしょうねえ。
私のうちに100年後誰が住んでいるのか気になるところです・・・
それに、100年くらい前に建てた人がどんな人だったのかも。
by めぎ (2011-10-22 07:08)
すばらしい彫刻。
昔は、聖書を読める人が少なかったのか、彫刻を見るとキリスト教が判る。
大聖堂の建物自身が聖書になっているのですね。
by laf (2011-10-22 07:25)
ヨンキントの絵のノートルダム、昔はこんなにはっきりと見えたんですね。
これは、描こうという気になるでしょうね。今はまた違った趣で絵になりますが。アンリ4世の騎馬像の写真、いい構図ですね。
ノートルダム、実際に行っても、ステンドグラスに目がいって、細かい彫刻
を見てなかったので、なるほどーと思いながら見ました。
by TaekoLovesParis (2011-10-22 08:02)
古のパリと、変わりゆく今のパリの光景を絵で辿る散歩、好いですね~。短い旅程でせわしなく街を移動してしまう旅行者は、たとえ、そこを通っていても気付かないで通り過ぎてしまうんでしょうね。ヨンキントは風景に忠実な描写だけど、インチキ(笑)が多いルソー(※バルビゾン派の風景画家・テオドールじゃなくって、もちろんアンリの方ね^^;)の描いた景色なんかも訪ねてみたら楽しいかもね~。住んでる人がひたすら羨ましいです。
by yk2 (2011-10-22 09:21)
私は残念ですが右だろうな〜
by pace (2011-10-22 10:16)
ノートルダム寺院、この一つの建物だけで
見どころが満載ですね。
じっくり味わいながら見てまわったら
一日でも終わらないのではと思うほど、素敵ですね。
一度前に訪れたところも、再度訪れると
見る観点も違っていたりして、新たな発見もすることがありますね。
芸術の街、
絵と照らし合わせながら楽しめるのもいいですね^^
by アールグレイ (2011-10-22 10:39)
へぇ、住む街とかで
定点観測か。時とともにいろいろ変化
してるんだろね。
by ぷーちゃん (2011-10-23 13:11)
ノートルダムのステンドグラスや彫刻の写真を眺めながら・・・・仏教の曼荼羅を思い出しちゃった。
鬼を踏んでる仏像とかもあるよね・・・毘沙門天だったっけ?
変わるもの、変わらないもの。
日本とフランスの似ているところ、違うところ、いろいろんな視点を感じるのも面白いね^^
by てんとうむし (2011-10-23 21:26)
教会の外壁の彫像まで詳しく教えていただいて嬉しいです♡
いつか行く機会があったら、しっかり観てみたいなぁと
思いました(*^^*)
by chercher (2011-10-23 21:44)
あの影は本物じゃないんだ~。面白いですね~(^^)
by 母ちゃん (2011-10-24 05:51)
ノートルダムは中も外も見所満載でじっくり見てるとあっという間に時間が過ぎてしまいますよね。
キリスト教に詳しいガイドさんが外壁の彫像の話をすっごく長い時間かけて説明してくれたことがあります。
その時の話では羽のあるドラゴンは確かサラマンダーだったような・・・
修復が済んで人が少なくなったら塔に登ってリポートしてくださいね〜
楽しみに待っています^^
by miffy (2011-10-24 17:21)
散歩記事、飽きてないですぅ。
もっともっとお散歩みたーい。です。はい。
聖ドニ!この名前を忘れちゃって調べていたんです。
わかってすっきり!モンマルトルの途中にこの方の銅像が小さな公園にぽつりあって、首を切られてからも歩いたと説明を受けたんですよね。すごいなぁと。
キリスト教は天国と地獄が設定されているみたいですね。
仏教は極楽浄土らしいです。この前住職の方に伺って妙に納得しました。
by カエル (2011-10-25 13:26)
彫刻、ずーっと見ていたいくらい面白いですねぇ♪
以前、仕事でお経を彫刻にするための下絵を描いたのですが、
もっとモリモリ盛りだくさんにすればよかったなあ、と軽く後悔しちゃう(笑)。
最後の写真の木の陰は絵なんですか?!
面白いです。うちのふすまにも木の陰描きたいかも…☆
by ネム (2011-10-25 16:50)
学生の頃いったノートルダム、修復中で確か中へ入れなかったような記憶があります。内部はこんな感じなのね~。ステンドグラスがとっても綺麗♪
「シテ島の花市」って部分に反応しちゃったんですが、お写真は撮らなかったのかな^^
by MOCOMOCO (2011-10-25 17:01)
翼廊から天井を見上げたところの写真、素敵ですねー。
心にじーんときました。
変わらないもの、変わるもの、さまざまですね。
最後の写真、
壁に描かれた木の影、おもしろーい^^
by hatsu (2011-10-27 06:02)
→皆さま
『変わらないもの、変わるもの』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 あっという間に10月も終わりに近づき、夏時間も終わってしまった日曜日は1日25時間。 1時間余分に眠れ、得した気分。 これでまた、日本の8時間うしろを歩くパリに。
→HIROMIさま
昔の職人さんや芸術家って凝り性だったのかもしれないなぁ・・・なんて思ったりして。 見どころ満載で、いつまで見てても飽きませんね~。
→めぎさま
同じ場所に長く住むと、その分愛着がわいてきますよね。 我が家も引越し話が出てないので、まだまだこの地に暮らせそうです。 100年は無理だけど、5年は同じ場所に住んでいたいな。 梱包、開梱、たいへんだもの。
→lafさま
フランス語の分からない私でも、目で追ってると、どんな流れだったのか、話が見えてくるくらいですものね~。 彫刻はホント、見事な作品でした。
→TaekoLovesParisさま
セーヌ川にノートルダム、パリを代表するものがどちらも構図に入るとなると、描かずにはいられないでしょうね~。 昔のパリと今のパリ、比べて写真を撮るの、結構面白くって、デジカメをいいことに何枚もふたりで撮っちゃいました(笑)。 ズームのおかげで、いろいろ大きく写せて、騎馬像もくっきり。 ノートルダムで最後の晩餐の彫刻に興味をそそられ、他の大聖堂に行っても、やっぱりチェックです。
→yk2さま
アンリ・ルソーの描いたパリの絵、いったいどこなんだろう・・・って場所すら分からないですよ。 岸の名前や橋からしても、え゛ー?って感じで。 住んでると、日常生活の場になっちゃって、絵画や歴史を意識してないと、うっかり通り過ぎちゃってることも多いんですよ~。 後回しになっちゃうとか。 観光客見てると、エネルギッシュでパワフルで何もかも吸収しようという雰囲気なので、私も見習わないと、と思います・・・。
→paceさま
自分で右だと思ってても、第三者から見たら左かも♪
→アールグレイさま
住んでいても、まだ観光ポイント全部は回りきれなくって。 バカンスでの旅程1週間ほどでは見きれないかもしれませんねぇ。 歩いてるだけで、気になるものがあちこちに。 美味しそうなお菓子も並ぶし、食べ歩きしてると、あっという間に一日終わりそう・・・。
→ぷーちゃんさま
だいたい2年ごとに一時帰国してますが、2年でも日本いろいろ変化してますよ~。
→てんとうむしさま
地獄の閻魔さまの審判は何日も続くけど、その結果の罰を受け終わると、また輪廻転生で、生まれ変わるっていう仏教の教えも凄いよね。 秋のしっとりした街並みと対照的に、デモしたり、ストしたり、動きの激しいフランスです・・・。 我が家はまだ夏休みが終わらない・・・。
→chercherさま
外壁、ずっと気になってたので私の覚え書きみたいな記事ですけど(笑)、一緒に楽しんでいただけて嬉しいです♪ いつか、あぁこれがあの・・・みたいに、じっくり見られる日が来るといいですね。
→母ちゃんさま
そうなんですよ、そばに並木があるから、一瞬影かと思うんですが、あれ?それにしては距離が遠い・・・と。
→miffyさま
やっぱり、あれってサラマンダーなのかな。 また、あれこれ調べてみようっと。 他の教会でもよく見かけるので気になって。 塔に上るの、真冬にすれば、少ないかな・・・。 あ、でも風も強いし、かなり寒いかな・・・。
→カエルさま
聖ドニさん、あちこちにいらっしゃいますよね~。 仏教にも地獄ありますよ。 閻魔さまなどの裁きを受けて、地獄行きになって刑を終えると、また生まれ変わるし・・・。 スペイン人に話すと、ずっと終わりがないの?と安らかに眠れないことをビックリしてましたけど・・・。
→ネムさま
曼荼羅もこてこてに装飾されてるし、ネムさんの下絵もモリモリ盛りだくさんでもまったく大丈夫だったかもしれませんね~。 って、お経を彫刻にするための下絵書きの仕事って言うのもスゴイな。 ふすまに木の陰、おっしゃれー♪
→MOCOMOCOさま
シテ島の花市は、切り花のお花がたくさん並ぶ、というより、植木市のお店って感じで緑のほうが多いかな。 お花屋さんは、やっぱり、オランダが一番♪ どこの街角のお花屋さんでも、マルクトの花屋さんだって、キレイだもの。
→hatsuさま
大都会は、横長の風景じゃなく、縦の線が多い風景でギュウギュウと詰まった感じですけど、縦に高い空間も、ここまで大きいとスッキリしますよね~。 壁の絵だとはなかなか気付かない、微妙な影の色の濃さもグッド♪
by Inatimy (2011-10-30 22:53)