夏列車に乗って、オランダも想う [フランス・パリの外]
街のビーチも、とうとう終わった。
熱波を乗り越え、振り返れば、夏の足跡。
私の頭上高く、2mはゆうに超える向日葵に出会ったのは、パリのベルシー公園。
向日葵なのに、太陽に背を向けた一本。 日焼けが気になる?
我が家は、ちびちびと、細切れのお休み。
あぁ、あれが夏休みっぽかったな、と思うのは、7月中旬の話。
ひさびさにパリの外へ出た。
といっても、RER(高速郊外鉄道)に乗ってだから、イル=ド=フランス地域圏の中。
途中で停車した時に、窓の外を。
列車は2階建て。 となると、座りたいのは上の階。
背中合わせのシートの側面に、白いマークが見えるかな。
あそこは傘入れ。
いくつか停車する駅は、どれも小さなものばかり。 のどかなところ。
窓からの流れる景色は、緑のトウモロコシ畑。
パリから1時間余り。 といっても、直線距離だとパリの中心からは20kmほどみたい・・・。
下車した駅のプラットホームは板張り。
なぜだか分からないけれど、自動車やメトロは右側通行なのに、
SNCF(フランス国鉄)とRER(高速郊外鉄道)は左側通行。
この後、列車は写真左の方へと進む。
乗って来た列車の後ろ姿を見送ると・・・
・・・何もない駅。 誰もいない駅。
灯りがつくにせよ、暗くなると怖いかな・・・日の長い夏時間のうちに来るのがいいかも。
切符は往復買ってあるので安心。
駅のプラットホームからの坂道を下りて、歩いた通りは人もいない。 それに静か。
何て心地いいんだろう。 それにパリの街の中より空気がいい。
可愛い家並み。 棟続きのローハウスかな。
ツタに覆われた家も。 玄関らしき扉は1つだから、一軒家?
歩道に突然、石のベンチがあったりね。
駅から歩いて10分もかからぬうちに、そろそろ目的地。
やって来たのは、Musée de la toile de Jouy トワル・ド・ジュイのミュージアム。
・・・トワル・ド・ジュイ博物館かな。
入口は、まだ歩いて、もう少し先。
小さな駐車場を抜けて、到着。 ここは、プリント生地の博物館。
Château de l'Eglantine レグランティヌ城というお城を改装したミュージアム。
トワル・ド・ジュイは、
Jouy-en-Josas ジュイ=アン=ジョザス で生み出された伝統的な生地。
この春、"Impression de Jouy"(ジュイのプリント生地)というアイリスを見たし、
Kamoさんは、トワル・ド・ジュイの白地に赤の単色プリントの柄の、
"Délices des 4 Saisons"(フランスの陶器Gienの食器)が好みだし・・・
・・・と、前夜に、ふと思い立ってルートを調べ、Kamoさんを誘ったのでした。
館内は撮影禁止なので写真はないけれど、内容充実のガイド冊子やポストカードで堪能。
欧州の布製品は、インド更紗の影響が大きい。
17世紀は、オランダ、英国、フランスなどそれぞれが東インド会社を設立して、
交易がとても盛んだった頃。
でも、フランスは1686年に国内製品保護のために、
インド更紗の輸入・製造を禁止。 身につけるのもダメだったそう。
解禁されたのが1759年。 その間にノウハウを失い、外国人技術者に頼るしかなく、
トワル・ド・ジュイの創業者はドイツ生まれ。
トワル・ド・ジュイの主な製品の流れが2つ。
多色使いのインド更紗風なものと、
白地に単色(赤、紫、青、茶色など)のもの。
インド更紗風な生地は、色ごとに作った木版で順にスタンプして柄を作り上げていたよう。
白地に単色のものも最初は木版だったけれど、
のちに銅版のプレートやローラーでのプリントへ移行し、生産量がアップした。
館内には、工場創業者オベルカンフ家の家族の絵画や再現された部屋、
工場の様子が分かる模型や絵、生地の貼った注文書、
使われた染料や道具、木版、銅版、年代順の布地や衣装などが展示されてる。
単色プリント生地のテーマは、田園風景の他に、神話、中国っぽい柄、
外国の街やエキゾチックな風景、建築、偉い人、音楽、気球など。
面白かったのは、生地の製造工程が描かれた柄もあったこと。
驚いたのはベッド。 天蓋、頭板、横板、枕もベッドカバーもすべて同じ柄布で統一・・・。
アルザス、ノルマンディー、マルセイユなど、フランスの他の地で生産された布の展示もあり。
白地に単色プリントは、トワル・ド・ジュイだけじゃなかったんだなぁ。
木版でのプリント製造過程のビデオ上映を見て、ショップでカードも購入。
ゆったりと3時間半ほど見学。
サロン・ド・テもあったけれど、天気が良いので
我が家ふたりはエントランスそばのベンチでのんびり。
庭には、ピンクの模様のミニ温室。
よく見ると、田園風景の布の模様。
裏には公園。 いろんな植物の生える遊歩道。
元気よく密生してて、ジャングル。 洞窟っぽいところもあった。
ミュージアムのある通りは、シャルル・ド・ゴール通り。
なんともレトロな消火栓も現役。
タイル張りで、シャルキュトリ(豚肉加工品販売店)・・・って書いてあるけど、普通の家だ。
来た道を駅まで戻ってRERの列車に乗る。
そうそう、あの駅の名前は、Petit Jouy Les Loges プティ・ジュイ・レ・ロージュ。
帰路の列車の窓からは、牛が見えた。
牛が見られただけでも、私のエネルギーは50%充電できるかも。
ほんの日帰りの旅気分。
帰り道、Kamoさん曰く、目をつぶれば田園風景の柄が浮かび上がる・・・って。
満喫してもらえたようでヨカッタ。
《 おまけ 》
欧州におけるインド更紗の影響について興味を持ったのは、
5月に行ったギメ美術館で花や植物をモチーフにした布を見て。
その時、私の手元にある生地をふと思い出したから。
オランダの北東、フリースラント州にある町 Hindeloopen ヒンデローペン で買ったもの。
オランダでは、17世紀にオランダ東インド会社がインドから輸入したのが始まりで、
フリースラント地域の女性の民族衣装に使われるようになったそう。
これもヒンデローペンの同じ店で。 青と白の色違い。
上は、北ホラント州の島 Marken マルケン で。
民族衣装の一部で、女性の前身頃につけられるもの。
下は、ゼーラント州の町 Middelburg ミデルブルフ の手芸屋さんで買った布。
オランダの民族衣装ってイメージわかないかもしれないので、昔に撮ったのを。
Arnhem アーネム の オランダ屋外博物館にて。
上左が、ヒンデローペンあたりの衣装。 植物柄にチェックを合わせるのがオシャレ。
上右が、マルケンあたりの衣装。 胸元に四角い布がある。 私が持ってるのは、これ。
ちなみにスカートも持ってるけどね。
下は、どこの地域かチェックしてないけれど、更紗っぽい帽子がいろいろ。
オランダは小さい国土だけど、地域色豊かで民族衣装も多種多様。
思えば、オランダでは、よく布を買ってたな。
週に1度のマルクト(青空市場)で、布を見てから食材を買うのが常。
クッションカバーやカーテンも自分で作ったし。 ← 直線縫いだけだから。
左はハンカチ。 日本から持って来たものか、オランダで買ったものかも忘れた・・・。
右は服を作ろうと意気込んで買ったものの、引っ越しですっかりタイミングを逃して。
左は、オランダを離れる時にマルクトの布屋さんで思いきって買った布。
右の2つは、HEMA のだったかな。
・・・と、もちろん、フランスのトワル・ド・ジュイ博物館でも布を、と思っていた。
でも、ショップにあるのは布を使った完成品がほとんど。
日本の手芸用品屋さんとのコラボで復刻プリント生地のカットクロスがあったけれど、
逆輸入だからか、ついてた日本の値札よりはるかに高額だった・・・。
ま、眺めて楽しむだけだしな・・・と、ポストカードに(笑)。
パリ近郊のトワル・ド・ジュイ博物館、布好き、手芸好きの方は、ぜひお立ち寄りを。
当時の世の中の出来事をもプリント生地柄で知ることもできるので、
案外、男女問わず楽しめるかも。
列車の傘入れに感激!きめ細やかなアイディアだわ。
布には、お国柄って出ますね~
柄はもちろん、色使い、生地のさわり心地など♪
by ぴーすけ君 (2012-08-21 21:19)
消火栓が可愛すぎ~です(^_^)
布の手仕事からは遠ざかっています^^;
by 夢空 (2012-08-21 23:27)
パリはものすごく暑かったんですか?日向で40度は大変です。
ほんと、地球は何かがおかしくなっています。
インド更紗の風合いって、いいですね。
by HIROMI (2012-08-21 23:55)
ウッドデッキのプラットホーム、素敵ね。20kmでこんな静かなところになるのね。この道シャルル・ド・ゴールドに続いてるってこと?わお!パリから北方に位置するのかな?
裁縫出来ないんだけど、布地が好き。関係ないけど紙も好き。切れ端持ってるだけで幸せを感じるのよね。
単色のパターンが好みかな♪
by カエル (2012-08-22 05:54)
可愛らしい駅舎ですね~。
のどかな田園風景だけ、列車から眺めている旅もしてみたくなりました♪
by 母ちゃん (2012-08-22 09:28)
東インド会社・・・・確かに勉強しました。
奥深い歴史に触れられるとタイムスリップしたような気持ちになります。
洋裁、レースなど手工芸を愛するInatimyさんの生地に対する
興味がよーく分かります。
オランダで多く見られた模様、そういえばこちらで流行のオランダ食器は
そのような絵付けの物が多く展示されていました。
by ami (2012-08-22 09:54)
駅舎は田舎っぽくて小さいけれど、しゃれていて可愛らしいです。
板張りのプラットホームも味がありますね。
オランダの民族衣装といえば白い帽子に木靴のイメージですが
こんなに大人っぽいのもあるんですね。
by luces (2012-08-22 12:13)
田園風景を眺めながらの列車の旅いいですね。
着いた先の街並もすごくステキで憧れます☆
by とみっち (2012-08-22 14:19)
可愛いお家や静かな駅に可憐な布たち..✿
どれも、こころにキュンキュン♪突き刺さりました^^
素適なバカンスの様子に、私も穏やかな気持ちになれました。
by baby_pink (2012-08-22 14:51)
どこへお出かけかと思ったらトワル・ド・ジュイの博物館だったんですね。
子供の頃、トワル・ド・ジュイのお皿で朝食食べてました。
最近はあまり見かけなくなったけど・・・
田園風景の柄が好きです♪
Inatimyさんがお持ちの生地どれもとってもステキですね~
友達はお気に入りの生地を額にいれて飾ってます^^
by miffy (2012-08-22 21:22)
すてきな小旅行でしたね。 わたしも細切れの休みだったから、夏休みを満喫って感じはなく過ぎてしまいました。
おしゃれな生地やかわいい布地を見つけるとつい手に取ってしまいますよね。
わたしもまだ形をなしてないものがあるなぁ…。
by バニラ (2012-08-22 22:30)
布は欲しくなるよねぇ・・・・。
最近は「えぃ!」って勇気を出して、少しづつ使うようにしています。
アルザスでもいろいろ欲しくなって困っちゃった。
トーションとか鍋つかみとか、形になっているものを買ってきてがんがん使ってます。
by noriko (2012-08-22 22:58)
ここ数日ホント暑かったですねえ・・・こちらも37℃くらいになったようです。昨日からようやくまあまあの気温になり、ホッと一息です。でも、これで本当に夏は終わりなのね、と寂しい気持ちも。
更紗が好きで子どもの名前を更紗にした友人がいるのですが、スイスのドイツ語圏に家族を連れて転勤して子どもを現地校に入れたら名前の発音が「ザハザ」になっちゃったって言ってましたわ。
by めぎ (2012-08-23 16:49)
列車の中の傘入れ、楽しいですね。
私も乗るなら2階がいいです^^
その国の文化や歴史が、染め物には生きているんですね。
『さらさ』って響きが可愛いなぁ。
by hatsu (2012-08-24 06:52)
→皆さま
『列車に乗って、オランダも想う』のお話に、たくさんのnice! & コメントありがとうございます。 布はたくさんあるけれどミシンを使うにはトランスを出してこないとダメだし、ミシンの音って意外とデカくってお昼寝の邪魔かなと、猫に気を遣ったり(笑)。 そういえばマルクト(マルシェ)に生地屋さんが出るの、パリでは見たことないなぁ・・・。
→ぴーすけ君さま
スペースを生かしてますよね、車内の傘入れ。 その国独特の雰囲気が布に出るから、いずれまた引っ越しかと思うと、今のうちに買っておこうとなってしまう~(笑)。
→夢空さま
消火栓のデザインって好きなんですよ~。 思わず撮ってしまう。 私も布は見るだけで、ボビンレースやカリグラフィーやクロスステッチから遠ざかってます・・・。
→HIROMIさま
パリ、ものすごく暑かったんですよ、フランスのある地域では40℃も軽く超えちゃったようで。 でも今週は最高気温で23℃なので、1週間で15℃下がるという・・・。
→カエルさま
シャルル・ド・ゴールという人物の名をとった通りだから、他にもその名のがあるのかも。 位置から言うとパリの南西になるのかな。 ヴェルサイユに近いところ。 私も布の他に紙も好き。 紙もカリグラフィーの先生からいただいて、在庫たっぷり♪ 小さな切れ端も残して、あとでモザイク画に変身。
→母ちゃんさま
のどかな風景を見るだけの列車の旅もいいですよね~。 昔、雪の中、金沢の友達まで会いに行ったときの日本海側の景色が、なかなか良かったなぁ。 青春18きっぷで、のんびりと。
→amiさま
東インド会社、懐かしい言葉ですよね~。 教科書で見たものが身近になると、やっと頭に入る私(笑)。 デザイン好きなので伝統の模様にすぐそそられてしまって、布の他にもオランダのタイルの絵付け模様とかも、以前、本買っちゃったし・・・。
→lucesさま
白い帽子に木靴、分かります~。 我が家にある民族衣装姿のキーホルダーもそうだし。オランダの民族衣装、男性のもシックで各地方の違いがちょっとしたところに出てるんですよ~。 オランダの漁師さんのセーターも地域ごとに模様が違ってて。 フランスはオランダより遥かに国土が広いから、もっといろいろあるのかなぁ。 また深く調べれば、ハマってしまいそうです・・・。
→とみっちさま
我が家には猫がいるから、どうしても出かけるのは日帰りの近場で。 それでもこんなにのどかな風景が広がるので、列車の旅は気に入りました♪ 小さな町や村はホッとできますね。
→baby_pinkさま
もうずいぶんと長いこと泊りがけで出かけることがなくて、ささやかな近場でのんびりというのが多いんですよ。 布が好きだから、お気に入りの服で着なくなったものも、コースターに変身させたり、下手くそながら手縫いでチクチク。 そんな時間が好きだったり♪
→miffyさま
すっご~い、トワル・ド・ジュイのお皿で朝食だなんて。 我が家のお皿は食器洗い機で傷がつくから、気軽に買換えできるようIKEAの365+シリーズですもの・・・。 生地、私も額に入れてました~。 でも最近ポストカードに変えちゃったんですけどね。 布出したら、日に焼けてました・・・。
→バニラさま
生地って魅惑的ですよね~。 使う予定がないのに、気に入ったデザインだと買ってしまうし・・・。 夏休みの実感がないまま、気がつけばもう8月も終わりに近づいてて、もうすぐ秋・・・朝起きると真っ暗だし、だんだんと日が短くなってるのが寂しいなぁ。 でも食欲の秋だわ(笑)。
→norikoさま
写真にたくさん写ってたよね。 お土産いっぱい買えたようで旅の余韻をじわじわ楽しんでるところかな。 アルザスも今では列車で短時間で行けるようだし、いつかまた行ってみようっと。
→めぎさま
ホント、暑かったですよね~。 昼間は窓開けられなくて。 今週末は最高で23℃と、一気に15℃も下がるし、体がついて行くのが大変。 めぎさんも体調崩されませんように。 語頭や母音に挟まれたSは濁っちゃうんですよねぇ。 今の時代、名前は海外に行った時のことまでも考えないといけないですね~。 長いとなかなか覚えてもらえないし、私に友達はRから始まる名前だったので、スペイン語で思いっきり巻き舌でした・・・。
→hatsuさま
更紗って漢字も雰囲気いし、響きもいいですよね~。 列車のコートかけはよくチェックするんですが、傘入れは見事なアイデアで。 2階は見晴らしもいいし、写真撮るのにもいい感じでした♪ 背か低いから、高いところからの視線が新鮮なんですよ~(笑)。
by Inatimy (2012-08-25 05:41)
トワル・ド・ジュイ博物館、楽しそうですね。
インド更紗の影響だったんですね。
4つ並んだ生地見本の左下、白黒のプリント、これにそっくりなCacharelのブラウスをパリで買ったことがあります。フランスっぽい柄だと思ったので。オランダの生地の模様は、白地に紺が多いんですね。デルフト焼きのイメージと思いました。
by TaekoLovesParis (2012-09-01 10:46)
→TaekoLovesParisさま
オランダの運河沿いに建つカナルハウスでも壁紙が白地に紺色のプリント柄だったので、フランスで赤のプリント柄を見た時に、むくむくとそそられ知りたいと思うように。 インド更紗に東インド会社、面白い歴史のつながりでした♪ 白地に紺は、ホントだ、デルフト焼きのイメージですね~。 最後の写真の右の生地はタイルっぽいし。
by Inatimy (2012-09-04 19:11)